りんごの嘆き

人生の後半もだいぶ過ぎた主婦りんごの嘆き。これからは自分らしく生きる。最後は笑って終わりたい。

カテゴリ:人生色々~小説みたいな本当の話 > ある50代後半の女性の話

それからしばらくして、あの人がいつにまにかいなくなった。

長い休みでもとったのかと思ったら
辞めたと聞いた。

誰にも挨拶もせず、いつのまにか辞めていた。

理由は「体調不良」とのこと。
具合が悪くて、休んだまま退職したのだろうと
誰もが思って、それなら仕方ないねと話していた。

でも、年齢より若く見えたし、パワフルで
元気だったので、病気になったとは意外だった。

ある人が私にこっそり教えてくれた。
「彼女、近所に住んでるのだけど、
昨日スーパーでばったり会ったのよ。
とても元気で、病気というのは嘘みたい。
もう次の職場で張り切って働いているわよ」

まあ、辞める時の理由として、
体調が悪い、親の介護、夫の転勤などを理由にする事が多いし
ありえる話だなと思った。

それでも、誰にも挨拶もなく
何故、辞めたのだろう。
楽しそうに仕事していたのに。
黙って辞めたのは寂しいなと思った。


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その後、しばらくしてから
再び、彼女の情報が入った。

「彼女は、解雇されていたんだって。
顧客の旦那さんと不倫して大変だったらしいわ。」

びっくりだ。

不倫相手の奥さんが、御主人と彼女の様子を不審に思い、
ご主人の携帯をチェックして発覚。

男性は40代。

彼女のパワーに凄いなあと変に感心した。


奥様の怒りは当然で、
会社に怒鳴り込まれた。
「お宅の社員は、人の家庭を壊すのが仕事なの?」
ばれたらこうなる事位、わかりそうなものだが
何をやってるんだか。
会社も迷惑な話だった。

そこで、私は思い出した。
あの寒い冬の研修の日に、
胸のあいた上着に素足にミニスカートで来た事。

休日だったのに、顧客のところに行ってきたと
遅刻してきた。

あの時がそうだったのか。
せめて、着替えてから研修に来れば良かったのに、
とても違和感があった。

会社としては、信用問題になるので
極秘にこの問題を処理したのだ。

こんな事があると
以前「私は優秀だったから、職場で妬まれたのが原因で辞めた」
とあの人が言っていた事も信用できなくなった。

今も、新しい職場で、どんな風に話しているかわからない。

また、嫉妬されたから辞めたと説明しているのかも。

うちの夫も転職が多く、辞めた理由を彼女と似た様な嘘で
ごまかしている。

自己アピールは良いと思うが
上司が嫉妬して解雇したとかいう
嘘はだめだし、
そういう事を言う人は絶対に信用できない。



その人
は、1人暮らしをしていた。
お孫さんがいるらしく
「孫ちゃんが可愛いの」
と嬉しそうに話す時があった。

ある時、彼女と一緒に組んだ仕事の経費の精算で
「私が一緒にだしておくから」と紙を渡され
すぐに自分の分を書いて、彼女に渡した。

それから3か月後、
上司が私に注意をしてきた。

「何で、今頃提出してくるの。とっくに閉めたやつだよ」
何のことかわからず、キョトンとしていると
その時の経費の紙の事だった。
あの人が3か月間、自分の机の引き出しに放置していたようだった。

しかも私の分だけ。
上司は「すぐに出してもらわないとこまるんだよね」
とかなり怒っている。

「え?すぐにだしてなかったのですか?
だしているとばかり~」
私が説明しようとすると
それを遮り、「これから気を付けてねっ」と言われて終わった。


人のせいにするのもなあ、と思い黙っていた。
彼女は自分で能力があると言っていたけど、
意外にだらしない人なんだと少しがっかりした。

彼女はその日は休みで、
先輩が声をかけてくれた。

「人に頼んだ自分が悪かったんです」
と言うと
「○○さんのせいじゃない?あの人はあまり信用しない方がいいと思う」
と小声で教えてくれた。

放置していた私の書類に気が付いた時、
「ごめんね。忘れてて提出が遅れたの。」と
一言私に声をかけ、上司にもそういう説明をしてほしかった。

他の人も、彼女から「私がやっておくから任せて」と
熱心に言われ、ならばと頼んだら、
実は全くやっておらず、
慌てて自分でやり直したとか
特にお金に関しての事は
絶対に頼めないと噂が入ってくるようになった。

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久し振りに、その人から仕事の事で話しかけられた。

当時の私は、夫はいないし、
下の子が小学1年で
帰宅時間は遅くならないようにしていた。

会社とそういう契約で働いていた。

そこに彼女が、
「私のかわりに担当してほしい仕事があるの」と言って来た。
内容を聞くと、
その仕事は夜までかかる事が多いとのこと。

時間的に無理だと説明したが
それでも、強引に頼んでくる。
「別に遅く帰ったっていいじゃない。
仕事を頑張ってよ」としつこい。

仕方が無いので
「夫はいませんし、まだ下の子が学校に慣れてなくて
しばらくは、早く帰宅したいんです。
会社にもそういう条件を受け入れて貰っています」
と家庭の事情を言うしかなかった。

すると、そこまで笑顔だった彼女の顔が引きつり
「子どもなんてほっとけばいいじゃない。
夜留守番できない様な子に育てたのはあなたでしょ!」
「家庭を気にして残業する気の無い人はだめ」と言い出した。

私は、
「何を言われても無理です。
すみませんが他の人に頼んでください。」
と言った。

彼女は、ハッとした顔になった。
しまった、と思ったのだろう。
会社の方針が「家庭を大事にすること」
「無理な残業はさせない」だったし
彼女には何の強制力もなく、
人に仕事を押し付ける立場でもなく、
こういう言動が会社に知られたらどうなるか。
ヤバい、と気が付いたようで
また笑顔になり「他をあたるわ。」と言って立ち去った。

つい、かっとなった一面を見られて
恥かしそうにした彼女を見たら
憐れに見えた。
何か1人相撲している感じ。

それ以降、彼女とはほとんど一緒にいる事も無くなった。


だいぶ前だが、私は体調を崩して休職していた時期があった。

下の子が小学校に入学した頃、職場に復帰した。
まだ完全な回復はしていなかったが
働かないといけないし、
薬を持ち歩き、何とか乗り切っていた。

その職場に私が復帰してすぐに
転職してきた女性がいた。

当時50代後半だったその人は
「前の職場で自分が優秀だったために周りから
妬まれて、居心地が悪くなったので辞めた」
と説明をしていた。


当時の自分より年上で、
若々しく、大人しい感じの人だったので
嘘を言っている様に見えなかった。

この人から色々教えて貰う事もあるかもと
思っていた。

ある時、彼女と一緒に仕事をする機会があった。

流石に仕事には慣れていて、
安心して仕事ができた。
契約先からの帰り道に
「私があの時、笑顔で対応したからうまくいったのよ。」
「私が、あえてああやったのが効果があったのよ。」
みたいな事を何度も私に話してきた。

単なるアドバイスかと思い、
素直に聞いていた。

でも、自己アピールの多い人だなと
夫みたいだとはちらっと感じた。

一緒に仕事していて楽だったので、
ま、いいかと気にしなかった。
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会社の研修が、日曜に行われた時があった。

彼女は利用客のフォローで仕事があると言い、
お客の所から急いで駆けつけ、遅刻してきた。
「お客様の都合で、仕方なく行ってきた」と言いながら
ばたばたと席についていた。

その時、私は彼女に違和感を感じた。

その日は、とても寒い冬の日だった。
皆、分厚いコートにズボンや
ブーツを履いて防寒スタイルの人で参加していた。

その中で、彼女は、
胸を開けたブラウスの上から薄手のジャンバー。
ひざ上ミニスカート。
素足にスニーカー。
見るからに、寒そうだった。

そういうファッションが好きなのは
個人の自由で良いと思うけど
この寒さで大丈夫なのかと驚いた。

ミニスカートの下は、タイツではなく素足だった。
冷えは大丈夫?と心配になるほど。
痛々しく見えた。

研修の部屋は、暖房がきかず寒かったのだ。

「その服装でお客の所で仕事してきたの?」と言いたいのをこらえ
「休みの日も、大変ですね」としか言えなかった。
                           続く

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