夕食を終えてくつろいでいると弟から電話がきた。 
何かあったのかと一瞬どきっとする。

健康診断の結果で、大腸がん検査にひっかかったらしい。

これまで大きな病気をしたこともなく
毎年結果は良好で、気にした事は無いと聞いていた。
なので、かなりショックだったらしく
ネットで調べたり、最悪の事を考えてしまい落ち込んだそうだ。

私と同じで、母の病気と死を見てから、
軽い検査と思って病院に行ったら、そのまま入院、帰らぬ人にとなる可能性もあると知った。
弟も自分がそうなるのではないかと不安になったのだ。
気持ちはよくわかる。
私なんてちょっとした違和感でもすぐ不安になるのに
ガン検査でひっかかるなんて、誰でも最悪の事を考えてしまう。

ましてや、母の後にすぐ奥さんの急逝を体験した訳だし。
次は自分か、と色々考えて夜も眠れなかったと言う。
正月は病院で過ごすかもとまで思ったそうだ。

すぐに私に電話しようかと思ったけど、
何でもないかもしれないし、自覚症状もないから
大腸カメラ検査後にしたと言っていた。
本音は、不安まみれの自分の弱さを私に見せたく無かったのかも。
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全身麻酔で胃と腸を検査し、寝ている間にあっけなく終わっていたと言っていた。
結果は、ただのポリープで、切除し何の心配もなかったそうだ。
検査結果を見てからの病院への予約、検査前の準備や検査の様子など
色々話してくれた。

奥さんが健在で子どもも一緒にいたら、
家族の支えで気も紛れて、私に電話することも無かっただろう。
こんな時は、奥さんがいてくれたらなと思った。
弟自身が一番感じた事だろう。

まだ高齢の父がいるし、弟の一人っ子は遠方だし、
もしガンだったらどうしようと色々考えた事だろう。
そのまま入院となったら、すぐ私に連絡して世話を頼まれたと思う。

母がいたらまたまた「可哀想!」と心配していた事だろう。
あの世から私に「助けてあげてね」と言っている気がする。
身体は丈夫だったが、精神面が弱い弟。
変なところは鈍感で、真似したい位なのに。

電話を切る前に「またいつでも連絡してね、助けてほしい時は遠慮なく言って」
と言ったら、安心した様子だった。
その言葉を聞きたかったのだろうと感じた。

何かあった時、誰かに話すだけで全然違うから、
電話して少しは気が紛れたことだろう。
私も明日は我が身だ。

まだまだ元気でいないと、老化したなんて言っていられないなと思った。