最近、ご近所の老夫婦の事が気になっている。
大きな道路を挟んで斜め向かいのお宅。
町内会は違うし、ほとんどお付き合いは無かった。

数年前までは、そのお宅の奥さんがお友達と良く立ち話をしていた。
野菜作りもしておられ、自宅横に無人販売所を作っていて
百円で新鮮な野菜が買えて、以前はとても助かっていた。

ばったり会った時は、挨拶からそのまま立ち話になったりした。
足が痛くて通院中だとか、この辺の地域の歴史など、よくお話されていた。
私はいつも聞き役だったが、母と同年齢に見えて、親しみを感じていた。

ご夫婦の二人暮らしで、資産家だ。
賃貸マンションを持ち、隣には息子さんが住んでおられる。
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そう言えば、ここ最近ご夫婦の姿を見ていない事に気が付いた。

母と同年齢位だったから、入院されたのだろうか。
昨年までは、今の時期は、お宅の前を通ると室外機の動く音がしていた。
今年は、室外機が動いていない。
人が住んでいる様子が感じられない。

年齢を考えると、何があってもおかしくない。
自分の実家と重ねてしまう。
夫婦で施設に入られたのかもしれない。

そうだとしても、人の気配が無くなった家というのは寂しいものだ。
これまでは、そのお宅の前を通るとお花が植えてあったり、
ご夫婦で外の掃除をしていたり、
夜は部屋から灯りがもれていた。それが当たり前だった。

自分の実家は、まだ父が元気でいてくれるけど、
母がいなくなった喪失感は、家の佇まいにも表れている。
花は枯れ、殺風景になった玄関や庭、
掃除の行き届かない家の中と周囲。もう母はいないのだと感じさせられる。

それでも、父がいるから「実家に帰る」という心の張りが持てる。
実家に行けば、迎えてくれる親がそこにいて、灯りと温かさがある。
誰もいなくなったら、と思うと他人の家でもこんなに空しくなるのだから
どれだけ、寂しく感じる事だろう。
いや、今はそんな事は考えない様にしたい。