ファンでは無いけど、好きな曲があるので
若い頃の格好よかった頃の?松山千春の古い動画を観ていた。
今とは別人みたいだ。私も同じだけど。
皆歳をとれば変わってしまうのは当然のこと。
いつまでも若い頃の雰囲気、面影を残せる人が羨ましい。
若い頃の松山千春を見ていると、誰かに似ているなあと気になった。
思い出したのは、高校の同級生F君。
小学校からずっと一緒だった。
仲良しではあったが、次第に照れくさくなってきて
それに友人の彼氏?だったし、
同じクラスになっても話すこともなくなってた。
まさか同じ高校になるとはお互いに思っておらず、
ばったり廊下であった時、お互いびっくりして
私は笑うだけ。むこうは素直に声をかけてきた。
「君と同じ高校に入るなんて想像もしてなかったよ」
と変わらない笑顔で。
彼は小学校の時から、真っ直ぐ目を見て
誰とでも自然体で無邪気に話しかける人だった。
私が男の子と話すのが苦手な方で、
いつも早口で答えるだけで、目をそらして逃げる様にしていた。
今思えば普通に話せばよいものを、失礼な態度をとっていたなあと
反省する。
F君は、いつも笑顔でちょっとワルな雰囲気もあって、
制服を崩して着るとか?カッコよかった。
絶対に人に嫌な事を言ったりしたりしない優しい人だったので
クラスでは人気者だった。
そんな彼が、大事なテストの日に無断欠席をした。
学校ではいつも楽しそうだったから、
登校したくない理由は誰も思いつかず、心配した。
担任が「電話しても出ない、家に行ったが留守だった。
誰か連絡とれる人はいないか」と聞いていた。
皆わからず、どうしたのか心配していた。
テストを受けないと、卒業できないのではという事も気になった。
数日後、担任がクラス全員の前で話した。
「Fの家に言ったら、借金取りが何人もウロウロしていた。
Fの家は自営業で、倒産し、夜逃げをしたらしい。
そんなだからFは学校どころじゃなくなったんだ。」
親から連絡がきて、担任は毎日彼の居場所を訪ねていた。
その報告を毎朝、クラス全員にしていた。
「Fは高校を中退して働きたいと言っている。
学校側は、彼をどうにか卒業させてやりたいと思っている。」
今なら、個人情報を教師がべらべら喋って問題かもしれない。
当時もそんな気はしたけど、
あの時のクラスはいじめもなく、皆が大人な対応をして、
変な憶測で彼を追い詰める事も無く、全員が応援していた。
「昨日、Fの親とFに会って話してきた。明日からFは登校する。
皆、何も無かった事にして、普通に接してくれ」
そしてF君は、登校してきた。
何も無かった様に、クラス皆何時もの通りに仲良く過ごした、
担任は、せっかくここまで頑張ってきたのだから、
卒業しましょうと説得したのだと思う。
公立だったので、お金もかからないし、
何だかの補助申請などの話もしたのではないかと思う。
ご両親も、進学校にせっかく受験勉強して入ったのに、
大学も行かせられなくなり、辛かったろうし、
せめて卒業はさせたいと思うのは当然だったろう。
彼には妹がいた。優しい人だったから、
自分が働いて家計を助けようとしたのは想像がつく。
今思えば、制服を崩して着ていたり、
お弁当の時間に、教室から抜け出しワルなふりをしたのも、
実はそういう事情を誤魔化す為だったのかもしれない。
(洗濯ができないまま着ていたとか、お弁当が無かったとか。)
それでも、学校が彼にとって息抜きの場になっていたのかも、
あれは心からの笑顔だったのかも。
卒業20周年の同窓会では、彼は欠席していて会えなかったが、メッセージを寄せていた。
「僕は頑張って生きています。当時大変だった僕を卒業させてくれた学校、
支えてくれた皆に感謝しています」
みたいな文章だった。
家族も持ち、都会で頑張っていると聞いて
私は(自分の事は棚にあげ)ホッとしたのを覚えている。
松山千春の若い頃の甘いマスクと、
歌いながらはにかむ表情を見る度、これからもF君を思い出す事だろう。