誰もいないのに、いないから?ぶつぶつ言っている。
つい人前でそれをやってしまうと、人からジロジロ見られる事になる。
それに言ってはいけない本音みたいな事を、
相手の前で声にしてしまったら大変だ。
気をつけなくちゃ。
母がお茶碗を洗いながら、よくぶつぶつ独り言を言っていた。
いつも何か怒ってて、言葉は聞き取れないが、
気持ち悪いのでやめてほしかった。
おそらく本人は、声を出してることに気が付いてない。
「その文句、聞こえているよ」
と教えてあげれば良かったが、
当時は、何を言ってもうるさいと怒られそうな雰囲気だったので
言う事もできず、我慢していた。
実家の家事を絶対手伝わない弟夫婦が、食器洗いをしなくて済むように
食洗機を置いた。
よかれと思っての事だろうが、母は、頼んでもいないし、
狭い台所が益々狭くなって不満だった。
私に愚痴るが、弟には気を使って言わなかった。
実は、台所での洗い物と言うのは、良い気分転換と、逃げ場になる。
人が沢山来ていて居心地が悪かったり、
ちょっと休みたい時とかは、洗い物をするふりをして逃げる。
夫と顔を合せたくない時などは特にそう。

夏などは、水が気持ち良い。
母が洗い物をしながら、ぶつぶつ何か言っていたのも似た様な事だろう。
嫌な事、怒りは、洗いながら流していく。
台所が綺麗になった頃には、気分もすっきりしている。
そんな母に対して、食洗機を使え、手で洗うなと弟は強制していた。
奥さんは喜んで使っていたかもしれないけど、
家事が好きな人もいるって事を知らないのだ。
仕事が忙しくて、家族も多くて、洗い物が山ほどになって
くたくたで負担になるお宅なら、自分だって喜んで食洗機を使う。
でも、そうじゃないから必要ないだけ。
新築の家なら食洗機は完備してあるのだろうし、
個人の好みなので、否定するわけじゃない。
家事は、脳トレ、運動にもなり一石二鳥。
特に歳をとってから、家事をしなくなったら老化が進みそうだ。
子育て真っ最中の頃は、家の中で椅子に座る余裕もなく動いていた。
あの頃、夫が食洗機を買って、少しでも気を使うようなところがあれば、
喜んで使っただろうが、とんでもない人だった。
余裕があって必要ない家に食洗機を置く弟。
貧乏で、夫に虐められ、子育てと仕事に追われる自分には何も無かったという皮肉。
結果的には、それでよかったけど。
洗い物をする時の気持ち良さを知ったから。