母は「もしかしたら、2度と食べられなくなるんじゃないか、
そうなったらそうな私はもう終わりよね」
と言い出した。
これまでは、入院生活は楽しいものだと思っていた母。
家事からも解放されるし
治療を受ければ、気分も良くなり
また元の生活に戻れた。
今回もそうなるだろうと思っていた。
コロナの影響で、誰にも会えず、
再発した場所が悪く、食事は禁止。
壁を見つめるだけの辛い状況になった訳だ。
日が経つにつれ、現実が見えて来たのだろうか。
両手に点滴、自由に手も動かせない。
日記を書くと、点滴の針が動き、ピーっと
警告音がなるらしい。
何もすることもなく
時間がただ過ぎていくだけ。
テレビはつけているが
音は消していて字幕で観ている。
コロナの悪いニュースを見ていると
気が滅入るので見る気も失せるとか。
病気が病気なので
そもそも、楽しい入院生活のはずがない。

白血病の患者さんもいる訳だし
他の人は具合が悪くてそれどころじゃないだろう。
退屈だと言っている間は、母は余裕があるということ。
本人は、身体の老化、脳の老化を心配している。
毎日寝ているだけの生活は、一気に認知症が進んだり
足腰が弱ってしまう。
だからとにかく誰かと話したいと
弟と私に電話をかけてくるのだ。
その不満を言う元気があるうちは安心だ。
「私はここから出られないのでは」
「薬が効かなかったらどうなるのか」
と質問された。
心の準備をしていた私は
自宅には帰らない方がいいと強調した。