母から1日に1度は電話がくる。

病室だし、様子がわからないので
こちらからかけるのは控えていたが
母は、かけてほしい様だ。

食事もしないしただすっと点滴しているだけの日々。

リハビリで、足のマッサージはして下さるそうだが
それ以外は、やることもなく
ただ、黙って寝ているだけ。

コロナもあるし、そうでなくても感染に注意する病気なのだから
面会は禁じられている。

その為、人と会う事も話す事も無く
壁を見ているだけ。

1日が長いのだろう。
それに、薬の効目があるかどうかもわからない。

以前の様に手術して、
抗がん剤の投与 が終われば、帰宅できるという確信も無い。

不安になるのは当然。

点滴生活のせいで、機能が衰える方が心配だ。

ただ、母は「何で自分だけが」とまるで病気にかかる事が
負けだと思っている。
以前から、病気や障がいに対して偏見のある人だった。

病気になるのは、ダメな人だ。
世間体が悪い。負けだ。
と思い込んでいる。

もし、私が障がいがあったり、
病気持ちだったら、母は私を恥ずかしい子として
見捨てただろうということ。

その間違った差別意識が自分を今、苦しめているのだ。
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「これが、1カ月続くと思うと
悪い事ばかり考えてしまう。
何で、自分ばかりこんな病気になったのか、
不思議で仕方がない、何で。」
と、弱音を吐き始めた。

母が落ち込んでいる理由が
「病気になってしまって、世間体が悪い。
誰よりも長生きするはずなのに。負けを認めたくない。」
という悔しさが原因であることも感じる。


「人は永遠には生きられないの。
いつかは、この世からいなくなるもの。
高齢になってからの病気はその為の準備なの。
自分がこんな病気になるのはおかしいと思うのは間違いよ。
人間は必ず老化するんだし、お母さんは、たまたま血液が老化しただけ。
誰でもが経験すること。悪いことじゃないよ。」

と、言ってしまった。

これまで元気な時は「私はこの先何があってもおかしくない」と
覚悟を決めたかのように言っていた母だが
実は、自分は特別で、
不老不死だと思っていたのか、
病気になるはずがない、なってもすぐ治ると思い込んでいた様だ。

世間体を気にしたり、
病気の人を馬鹿にしたりするのはもうやめてほしい。

隣のベッドの若い患者さんをそんな目で見ているし
自分はあの人とは違う、自分はたいした病気じゃないと
見栄を張っている。

内容はともかく、母がそこまで元気だということだから
安心はしているが
ここまできて、まだ差別意識を持つのは
やめてほしい。
自分が辛くなるだけだ。

私が、諭したら「そうね、フフッ」と笑って誤魔化していた。

不安になり、錯乱したりする人もいるだろうから
母の脳と足腰が弱らなければよいが。

「薬の効果が出る前に、環境が身体を蝕む気がするね」と
話し、母の不安に寄り添うつもりでいる。

私は、電話と手紙を。弟は、着替などの物のやり取りをする。
雑誌などを差し入れすると言っていた。

弟は、他の医師に色々相談してみて
薬が効かなかった場合、どんな事ができるか
可能性を見つけようとしている。