母から電話がこないと
心配になる。
かと言って、こちらからしつこくかけるのも
向こうの様子がわからないし、病院なので遠慮してしまう。

こうなる前は、母からの長電話をうっとおしく思っていたのに。
それは、いつでも会える、話せるのが前提だったからだと
今更感じる。
いつ、2度と声が聞けなくなるかわからない。
顔も見ないまま、お別れになるかわからない。

携帯でベッドにいて話ができるというのは
とても助かる。
携帯が無かった時代、使用できなかった時代、
(部屋によっては禁止なのは当然)
それに比べれば、全然違う。
声をきけるだけで安心する。

明日から、抗がん剤投与が始まる。
これから、急激に弱るのだろうか。

何もしない方が良いのでは、とも思えるし
回復するかもしれないと思えば必要だし、
母自身が、治療すればすぐ帰れると信じているので
治療した方が、希望を持てるだろう。

が、途中で苦しみだし、効果も見られないなら
緩和ケアに移行するしかない。

転院する時に、一時でも帰宅させたい。
その場にいたい。

コロナで、県外への移動は自粛要請がでているし
困った。検査キットはネットで注文したが
何度も自分で検査しながら
気を付けながら帰省するか、迷っている。
そのタイミングも。

今は病院にすら立ち入れないので
母に会えるチャンスの時に、とは思うが
それがいつになるのか、わからない。

昨日も母から電話がきて
「また持ってきてほしい物がある。(弟に)伝えて」
「お箸が入った箸箱とスプーンを持ってきてほしい。」
「そのうち食事をする練習が始るでしょ。まずは流動食からよね。いつでも食べられるように
用意しとかないと。」

食器棚の引き出しのどこどこにあるから、伝えてね、と
何度も言う。
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一瞬、胸がきゅっとなったが、
気持ちを切り替え、
「そうだね、わかった。伝えておくね。明日、帽子が届くだろうから
それと一緒に、持っていくと思うよ。」
といつも通りに明るく答えた。


二度と、食事はできないと医師に言われている。
食べると、十二指腸が破裂する可能性があるそうだ。

本人は知らない。

今は何ともない、痛みも苦しさもない、歳相応にだるいだけ。
と言う母。

これを、抗がん剤で、わざわざ副作用で弱らせるのが果たして良いのか。

何もしない事を選んでもいい、
でも、治療をしなければ、そのうち強い苦しみが襲います。
なので、苦しみを和らげながら看取るやり方を
今すぐ始めてもいいです。

と医師に言われたらしい。どっちにしろ、結果は同じだと。

母が、今苦しんでいるのなら、緩和ケアをすぐに選ぶのだが。

毎日、私の思いは、同じところをグルグルと回っている。

どこかで、医師の話が信用できない。

弟も同じ気持ちなので、色々相談すると言っていた。
弟の存在が助かる。
どんなに気がきかなくても、
奥さんが冷酷でも、
今ほど、いてくれて助かることはない。

私より、何倍も辛いと思う。

母と今日は絶対話して置こう。

明日からどうなるかわからないから。