高校の後輩でもあることから
このママさんは、他の社員さんよりも
先輩には言いたい事を言える親しい関係ではあった。
なので、他の人の先輩への不満の聞き役になっていた。
社長は、社内で先輩への不満が溜まっていることは知っていた。
だから、ママさんには何とか我慢してほしい、
辞めないでほしいと時々、声かけをしていた。
ママさんは、先輩へのイライラが溜まると、
社長が理解してくれているから、何とかしてくれると
自分に言い聞かしていたという。
仕事ぶりは滅茶苦茶なのに、給料が他の誰よりも多い先輩の待遇も
皆が不満を持つ理由の一つだった。
ママさんが、皆の代表になって
社長に相談に行く事が増えた。
その度、うまく丸め込まれるような感じになっていた。
人がやめては補充、やめては補充という繰り返し。
そんなある日、ママさんは社長から「話がある」と
呼び出された。

話は、「コロナで会社がやばいことになってきた。
リストラや給与の減額をしないと倒産してしまう。
君の給与も減らさないといけなくなった。1人で子どもを育てる君には
酷な話だと思う。もし、やっていけなくなるなら、今のうちに次の仕事を
探してほしい。」
というものだった。コロナが影響する仕事ではないと思ったが
社長はそう言う。
先輩は嫌いだったが、
仕事は好きで乗ってきた時だったので
ママさんは辞めたくなかった。
でも、生きていくためには稼がないといけない。
ショックを受けて帰宅すると
夜に先輩から電話がきた。
先輩は、
「社長から聞いただろう?僕が誘って入れたのに
こんな事になって、申し訳ない。
会社がやばいのなら、どうしようもないからなあ。
僕も、給料がでなくなると言われたけど、
妻が稼いでるし、社長に恩があるから
無給でもやめませんと答えたんだ。
会社が立ち直るまで、残って社長を支えると言ったんだ。
自分の給料もでなくなる僕には、君を助けることが
できなかったんだよ。」
と、さも、心配したかのように話したと言う。
今更、しらじらしいな、どこまで本当かなと
醒めた気持ちで聞いていたママさん。