「いつまで薬を飲まないといけないんだろう。髪が薄くなって困るわ。毛染めもできないし、髪は大事よね。外は帽子でいいけど何かお呼ばれした時に室内で帽子かぶれないし、かつらを買わなくちゃ」と何回も同じ話をしてくる母。

私が試しに買って送ったヘアピースでは、カバーしきれないほど髪が減っているらしい。

それでも、無いよりましだと家でつけているが、ピンでとめるので、薄い髪にはそれが負担なようだ。

ヘアピースは自分の髪がある程度あればうまくなじませて、ピンもしっかり止まるのだろうが、髪の少ない人には使いにくいのだろう。

「女の人じゃないとこういう事は相談できないしねえ。男の人は関心ないみたいだし話を聞いてくれない。嫁さんが一緒にかつらを見てくれたらなあ。あなたが次来るまで待ってもいいけど、いつ何があるかわからないから、かつらは早くほしいのよねえ」

いつでもお構いなく電話をかけてくるので、でないでいると、ストーカーのように何故でなかったのか、かけ直してこないのかとしつこく、同じ話を繰り返し、電話を切ってくれない。

昨日は私も切りたくてイライラしていたら父が横から注意してくれ、強引にきらせてくれた。
父が昔から注意しているのだが、「私のお喋りは生きがいなんだからね、私の楽しみを奪う気か?」とキレるだけで全く聞き入れない。

母は、自分からかけた電話でも、相手が話している途中でも都合悪くなると、ブチっといきなり切る人間だ。我儘だ。

弟に話すと「そう言わずにお喋りの相手してやってよ。退屈なんじゃない?」と言うが、自分は母の電話は冷たくあしらい、さっさと切る。母も弟も勝手だ。

母が相談しても無関心な弟、お嫁さんは言わずもがなだ。

先日母が嫁さんに髪とかつらの話をしたそうだ。
すると「髪なんて気にしなくていいですよ」とあっさり流されたらしい。つまり母の相談ごとにはのりたくないという意志表示。予想通り。

入院中、腸閉塞の再発で、目の前で吐いて苦しむ母を見ても「お母さんは元気じゃないですか」と言って気にすることもなく帰った人。
結局腸切除になっても、それっきり見舞いにも家にもいっさい来なかった人だ。

これまで子育ても食事も引っ越しも、ほとんどうちの親にやらせてきた人だ。

「老後の世話になるから」とそれをあてにして、必死で尽くしてきた母。
そんな裏切りにあうと思わなかったのか。若い時から私にはわかっていた。

なのに、私の忠告も聞かず、老後をあてにする計算で大事にしてきた母が愚かなのだ。
裏切られたと今更言うが、「そもそもそんな約束してないし、勝手にお母さんがやっていただけでしょ」とお嫁さんは言うはずだ。
どんなに助けてもらっても、お礼も言った事も、家に呼ぶことも、お茶一杯いれたことも、無かったんだから、そんな人が老後の面倒をみるわけがない。そこまでの態度を見ても、まだ息子夫婦をあてにする母がおかしいのだ。

私がいくら「弟夫婦をあてにしてもだめ、計算でやっているなら、これ以上尽くすのは無駄」と言っても、母は私が嫌な人間のように言い返すだけだった。
「そんなはずがない。あの子たちはそこまで悪い人間じゃない。老後の世話してくれるはず」と言うだけだった。
私のいう事は馬鹿にしていた。

今になって、やっと現実に直面し、私の話に耳を傾けるふりはする様になってきた。
が、しかし…
「天井の高さまであるカーテンをはずして洗いたい。」
「天袋の中の段ボールを全部降ろして、片付けをしてほしい。天井裏にあがってほしい」‥等。
「あなたにやってもらう事沢山あるからね。」ときた。

「男の弟に頼むことよね、カーテン外せるのは弟でしょ。」と言うと、危ないから?私にやらせるという。ひどい。
弟には「そんなこと頼めない。嫌な顔をされるから」だと。
私が嫌な顔をしたら、ぶちきれる母。つまり、息子夫婦には嫌われたくないが娘にはどう思われても平気。ということらしい。

息子さえいれば良いのだ。世間体も何もかも。

そう言えば、夫の親もそうだった。娘はいなかったが「長男さえいたらいい。」と言って、長男だけを特別扱いしていた。
yuyakeaozora

余命短い親なんだから、手伝える事はやりたいと思うが、私にも限界がある。

私の生活が破綻して、怪我でもして動けなくなったら、母は文句をいうはずだ。要領が悪いとか、知らなかったとか。いや、また何もなかったことにするだろうな。誰にも言うなと。

弟には、私から母の苦情を言っている。

弟は嫁をかばうことに必死で「わかった。自分がやるから」と答えるだけで、実際やらない。というか母が弟にはっきりと言わないのが問題なのだ。いい顔しか見せない。
弟がやると言っても、やらなくていいと断っている事も多いだろう。


娘の私という存在が無ければ良かったのかもしれない。
母の裏の顔や本音や汚れ役を娘に押し付けることで、発散しているのだろうし、繕っていけるのだ。

娘がいなくて、発散できず、弟夫婦と真っ直ぐぶつかれば良かったんだ。少しは人間として弟だけでも優しさを取り戻したかもしれないし。

それより、私は足の怪我がなかなか治らず、心配になってきている。

医師にも「長くかかるよ」と暗い顔をして言われてしまった。