その情報は、りーの彼氏の友人からのものだった。その人から聞いたという話をそのまま書いてみる。
「結婚式の招待状が届いたから出席するつもりだったんだ。そしたら、彼女の方は招待状を送っていないことが発覚したらしい。何だかんだともめているうちに結婚式の前日になってしまった。突然、彼女から”結婚はやめます”とだけ電話がきて、逃げられちゃったらしいんだよ。連絡もとれなくなり、行方不明になった。
全ての後始末はあいつが全部やったんだよ。式場のキャンセル、招待客への連絡など、前日にやらさられるとはねー。
結婚したくなかったのなら、もっと早くにきちんと言うべきだよね。このやり方はひどい。あいつは、毎日泣いてて、立ち直るのに時間かかったようだ。皆、彼女の事、怒っている。」

そうだったのか。りーの気持ちはわからないでもないが、やり方がひどい。
おそらく彼女の実家は、相手側に頭を下げて回り大変な事だったろう。
人生の長い目でみれば、結婚に後悔したくなかったからこんな失敗もあるかもしれないが、無責任な行動はアウトだろう。
これがドラマの中のシーンなら盛り上がって良いのかもしれない。断るにしてももっと良いやり方が無かったのか。彼だけにキャンセルの処理を押し付けず、断る時期が悪かった事の責任はとるべきだろう。彼女自身のその後の人生の為にも、逃げて音信不通という選択はまずかったのではないか。
男性側の遠方から来る招待客も旅費やホテルのキャンセルをしたはずだ。
唯一、りーは自分だけは招待状を出してなかったから、自分の方は、迷惑をかけずに、恥をかかずに済んだ。
私も結婚式の日に、逃げたくなったから気持ちはよくわかる。でも、そこまでの現実逃避はできなかった。
あの時、結婚式なんて挙げなきゃよかったと思った。
ただでさえ、友人の少なかったりーは、結局彼氏も友人も、この件で全て失ったようだ。
その話を聞いてから、数年後、私は結婚して別の土地に引っ越ししていた。
ある日突然りーから電話がかかってきた。音信不通にしていたのに驚いた。