昨日の続き


子どもの泣き声で、事故だとわかり、私はすぐに道路に出た。


住宅地の中の狭い道路。抜け道になっており、朝晩はスピードを出して走る車が多い。


微妙にカーブになっているし、坂になっているがそうは見えない。


見えている様で見えていない事に気が付きにくい場所。


そんな道路の真ん中に母親らしき女性が倒れていた。泣いている女の子は近所の人が抱きかかえていた。

音と共に近所の人たちも一斉に出てきていた。


倒れているお母さんは、弱々しい声で唸っているが動かない。目も閉じている。


自転車が横たわっていた。近所の人が救急車を呼んでいる。私は女の子が気になり話しかけた。


目立った傷は見えないが、ショックで泣いている。


おそらく近くの保育園に行く途中だったろうと予測し、聞いてみた。

「お名前は言えるかな?」
女の子は頷き、名前を言えた。大丈夫だなと少しほっとした。

「○○保育園に行ってるの?」うんと頷いた。


近所の人に「保育園に連絡してきますね」と声をかけ家に帰り、園に電話をして女の子の名前を伝え、説明をした。


ああいう時は、救急車の到着が遅く感じるものだ。
道路に倒れたままのお母さんの様子が心配だった。
「痛い…」と時々言葉をだしていたが、動けず、頭は膨れていた。

そばにいる人達で、意識が遠のきそうな女性に声かけを続けていた。

私は家から毛布を持ち出し、横たわる身体にかけた。

近所の人が、通行止めにしてくれており、周りを見ると野次馬の人が沢山立っていた。

倒れている人を見世物にしたくない気持ちもあるし、保温の必要もあるかなと感じて毛布は必要だと思ったのだ。

実は、日ごろから、こういう事を想定して古い毛布をすぐに出せる様に置いている。


災害の時も何にでも役にたつ。
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やっと救急車が到着した。私はもう用がないので、その場を少し離れていた。

園長先生がすぐに走って来られ、「○○ちゃん!」とその女の子を抱きしめ、到着した救急車に一緒に乗ってくれた。
ご家族への連絡は園がやってくれるだろうと安心した。

隊員が毛布をゴミを捨てるように投げた。女の子とお母さんと園長先生が救急車に乗って行った。

警察が車の運転者に事情を聞いている。

道路に投げられた毛布を拾って帰宅しようとしたら、ぶつかった車の中から女の子の泣き声がする。激しい泣き声だ。
「ああ、この子も保育園にいくところだったんだね。びっくりしただろうね。」と初めて近所の人たちも車の中に子どもがいた事に気が付いた。