社員の電話は続いた。

「副社長のお母さんが来られた翌日、社長と副社長が一緒に休みをとったのです。別々の理由で。でも、社員は皆わかっていました。2人に何かあったのだろうと。あ、皆気がついているんですよ。口にはださないですが。あんなあからさまで、関係がばれない方がおかしいです。

副社長のマンションの駐車場に社長の車が停めてあるのを見られていますし。でも二人はばれていないと思っているんですからね。

話がそれましたが、二人は休んだ翌日も、様子がおかしくて、暗いのです。おそらく病院にいったのでしょう。」
ここで、一旦電話がきれた。
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Mさんが一番恐れていた事が起こった様だ。自分に苦情の電話や相談に来たベテラン社員さんは二人目だ。


社長の奥さんに相談するなんて、普通はありえない。よっぽどのことだ。

それだけ会社を大事に思ってくれる良い社員さんが、彼女が原因で苦しみ、辞めさせられる。


Mさんはご主人に腹がたっていてもたってもいられなくなった。

数日後、再び電話がきた。

「実は、あの日、3人で話していた時の内容を聞いていた人がいたんです。

副社長のお母さんは、”娘はまだ若いし結婚して子どもを産んで、普通の幸せな人生を歩んでほしい。あなたが誘惑して、会社を任せると甘い言葉で誘って、娘の人生を狂わせたんです。

私は母子家庭で苦労して娘を育てました。幸せになってほしいのに、娘は一生愛人として生きていくのですか。子どもも産めないのですか。

今、あなたがすぐに奥さんと離婚して娘と結婚してくれないなら、こちらにも考えがあります。娘は別れない、いつかあなたが結婚してくれるまで待つと言っています。

子どもができたのに産めないなんて可哀想です。私も孫の顔が見たい。せっかくできた子どもを失うなんて辛すぎます。子どもを産ませて、認知してください。そして、奥さんと離婚話を進めてください。”

と訴えたそうです。社長は本来気の小さい度胸の無い人です。即答できず、お母さんに圧倒され、何も言えなかったようです。」


今のところ、ご主人からはMさんへそんな素振りは全く無く、そこまで夫が追い詰められているなんて知らなかったMさん。
どうみても、家族を捨てて彼女を選ぶ度胸は無いと確信する。夫は気が小さい。

軽い気持ちで、若い女性にちょっかいだしたつもりが、どんどん深みにはまって、相手が想像よりやり手で上手だったということか。

お母さんの気持ちは理解できる。だが、結局、ご主人と縁をきらせることは考えていないようだ。


「で、結局社長がはっきりしないので、お母さんは、”これからどうするつもりですか。娘と縁を切る時は、多額の慰謝料を払ってもらいますからね。このままずるずると関係を続けるなら、一生娘の面倒を見てもらいます。”と社長に迫ったそうです。

それでとりあえず、話は収まったそうです。社長はあの親子に死ぬまで執着されそうですね。どうにかして副社長を排除できないかと思っていましたが、ここまできたら無理なのかなあと諦めています。僕もいつまでいられるか、わかりません。

最近、また辞めるように仕向けられています。

副社長は、この件以来、更に強くなり、社員全員入れ替えようと考えて居るみたいです。自分の気に入った人、言いなりになる人だけの会社にしたいようです。

それだけではありません。あれ以来、お母さんまでもが我物顔でよく会社に来る様になったのです。
「うちの娘の会社」と人には話し、社員に対しても上から目線なんです。親子で乗っ取ろうとしているのだろうかと恐くなりました。」

Mさんは、もうここまできたら、会社もご主人も、彼女の好きに利用されてしまうと危機感を持った。

どうにかしなきゃと考えた。