その前からちょっとムッときていた私は、その言葉を聞いて許せなくなった。


せっかく旅行に来ているんだし、ここで喧嘩しても一緒に来た友人も気を悪くするだろうし、我慢した。

「だからうちでいいの?って聞いたのよ。そう言うならホテルに泊まれば良かったのに。」とだけ私は言い返した。

無神経なK美は、私の気持ちに気が付いていない。

「いいのよ。ここで。気にしないで。」と私に言って、「ごめんね、ごめんね」とその友人に言いながら自分達だけ布団に入ってさっさと寝ていた。謝る相手が違うだろう。
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私はどうしても許せなかった。というのは、「こんな狭いボロな所で」と言うK美の言葉は、私の両親を侮辱したに等しいからだ。


借金してでも、大学にいかせたい、したい事をさせたいと、父は、自分の事は後回しで辛抱して仕送りをしてくれた。安い狭いアパートでも、私にとっては天国で嬉しい事だった。

贅沢を言ったらきりがない。実家が苦しいのはわかっていたので、感謝していた。


それを馬鹿にされ、「こんな貧乏な生活とは思わなかったわ。もっと派手にいい暮らしをしていると思ったのに、期待外れだった。他の女子大生はもっと優雅にしているわよ。」とK美に言われた時、もう二度と彼女は家に入れない、会わないと思った。


もし、私がお金持ちのお嬢様なら、全く態度が違っていたはずだ。ペコペコしてほめちぎって、家来みたいにべったりとくっついてきただろう。


貧乏人は利用するだけ。そんな人なのかと思ってしまった。


K美の信じられない行動はこれで終わらなかった。