女性患者へのわいせつ罪に問われた乳腺外科医の無罪判決の記事を読んで、複雑な気持ちになった。
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この事件は、(わいせつ行為を受けたと訴えた)A子さんも、外科医も被害者だと思う。

「術後せん妄」についてもっと研究が進み、現実かせん妄であるかの科学的判断、誰でも納得できる判断基準の様なものがもっと確立していればと感じた。

術後せん妄についてのガイドラインはある様だが、A子さんから訴えがあった時、すぐに専門家が対応していればここまでこじれなかったのではないかと思う。
警察はわいせつ事件と決めつけ、科学的証拠の扱いもいい加減だった事が2人の不幸を大きくしたのではないか。


現在もA子さんは「せん妄ではない、現実だ」と主張している。それほどリアルなものらしい。嘘はついていない。本人は現実だと信じているのだから。

看護師の色んな証言や、現場の状況を聞くとありえない事件だとは感じる。警察のわいせつ事件ありきの捜査が、A子さんの心情を更に煽ってしまったのではないか。

A子さんも不幸だし、医師も大変な痛手を負った。誰も悪くないから空しい。

私の知り合いにも、家族が術後せん妄で夜中に騒いだり、暴力を振るったりしたという人がいた。

その時はまるで別人だと。その事を本人は記憶していない。
「見知らぬ男が窓から侵入してきた。」と騒ぎだし、窓に向かって椅子を投げようとしたとか。ある時は、子どもに戻り、娘の顔を見て「お姉さんは誰?」と聞いて来たり。


看護師によるとA子さんの記憶にない、色んな行動はあったらしいが、この医師のせん妄だけは記憶していた様だ。

A子さんにとっては判決がでようと被害は現実のものと信じ、誰にも信じてもらえないと本人は辛く悔しい思いをしているに違いない。深く傷ついている事は確かなのだ。
せん妄のせいだと認めるにしても悲しい。

この事件には、他にも問題がある。


医師がまだ裁判を受けていない段階で、100日以上拘束され、社会的信用を失い、職を失い、ネットの悪意ある書き込みで家族まで傷ついたことだ。


警察のいい加減な科学鑑定に問題があった事も考えると、この事件に限らず、簡単に冤罪が起こりやすい状況があるのは恐ろしい。

事件とは関係ないが、SNSでは故意にデマを流しても、流した時点で被害者のイメージが世間に広まってしまう。
後にデマを認め謝罪して貰っても、ついたイメージはなかなか払拭できない。他人事では無い。自分もいつ当事者になるかわからない。