⇒続き


夫の仕事の内容、待遇を聞いたところ、Y氏は少しうろたえた。

そして「ちゃんと給料だしますよ。彼の能力に期待してますからね」と言った。

「具体的に教えて頂けますか?役職なら何を?お給料は幾らですか?」とすぐに問い返す私。
夫から聞いた”資金を出せと言われた”話は、ここではまだ聞かない事にした。


Y氏は、むっとして「なぜそんな事を聞くのですか?私を信用できませんか?」と言う。
横でAさんが頷いている。

「夫に期待して頂いているのはとても有り難く、感謝しています。でも、もし夫が期待に応えられなかったり、ミスをして迷惑をかけた場合はどうなるのでしょうか?夫に期待されている能力とはどんなところでしょうか?」としつこく粘ってみた。


Y氏は、おそらく私をなめていたのだろう。最初にいきなり怒鳴りつけたのも、力で何も言わせなくしようと思っていたのだろう。思っていた通りの人だった。

「家族の生活がかかっていますし、これまでも夫には転職される度に振り回されてきましたので、慎重にならざるを得ないんです。Yさんがどうのという問題ではないんです。今も職場でトラブルがあり、じきに辞める事はご存知ですよね?それなのに夫を評価するというYさんに対して、夫は期待に応え、絶対に裏切れないと思うのです。夫がまた同じ失敗をし、御迷惑をかけるのではないかと不安なのです。」と説明をした。


夫が横にいるのに、言いたい事をそのまま言っている自分は、自棄になっていたと思う。


すると「う~ん、そうですね、給料は○○円位かなあ」とY氏がぼそぼそ言い出した。


それは意外に少なかった。「役員にすると言われた」というのは嘘だったのか。


夫が「エッ?そうだったっけ?」と声を出した。


Y氏は「様子を見てから少しづつ上げていくよ。」と言う。


「個人の小さい会社だからね。大変なんですよ。給料を貰えるだけの仕事をしてもらわないとね」とY氏は夫に向かって言った。

「と言う事は、能力が無いと思われたら、給料はカットか無しになるのですか?」と私が聞くと
「そうだね」とY氏が開き直った感じで答えた。

この時の夫の気持ちなんてどうでも良かった。夫はただ黙って聞いていた。


Y氏も夫も、予想外の展開だったのか、表情が暗くなっていた。