所詮獣なんだよ
子どもが「そんな事したら、犬が怖がるだろうッ」と夫に言った。
すると夫は、フンと馬鹿にした顔でこう言った。
「犬なんて所詮獣なんだよ。なめられたら手に負えなくなる。最初のうちに棒でたたいたり、力でおさえこまないと躾けなんかできないんだよ。こっちがお前より上なんだぞと教えてやろうとしたんだよ。」
何を言っているのだろうと、唖然とした。
このまま夫を放置していたら、小さい子犬に何をするかわからないと思った。
「それは狂犬に襲われた時の話でしょう。こんな小さくて怖がっている犬に、そんな事して言い訳ない。それで犬に好かれるはずがないでしょ。愛情をかけて初めて信頼されるものでしょう?」
と私は怒った。
すると「だって、親父がそう言ってたんだぞ。うちでは最初に親父がそうやって躾けてから飼っていたんだ。」と言うのだ。
デター!
「お袋が言ったから!」「親父が言ったから!」~ お前さん、いくつなんだい?
「動物虐待じゃないの。うちはそんな事は絶対やらない。間違っている。あなたはこの子(犬)には一生嫌われたままだわ。犬好きの人とは思えない。」
と言って、夫にはわかってもらうまで、触らせない様にした。
夫の実家で昔飼っていた犬が、大きくて躾けが悪くてすぐに噛みついたりしていたのかもしれない。
危険を感じて、舅が犬をたたいたのかもしれない。それはそういう状況だったからと思わず、そのまま父親の行動が正しいと信じ、どんな犬でもどんな状況でも、同じ事をすればよいと思い込んでいる。
夫は、自分で積み上げた考えというものが無い。いつも人の真似なのだ。
犬に好かれるとか、犬好きとか言っていたのに、現実は真逆。夫は何をしてもこんな調子。
さんざん立派な事を言い、期待させといて大きく裏切る。
またか、ああうんざり。と疲労感が半端ない。
その後、あまり帰宅しなくなったので、犬との接触は少なくて良かったのだが、犬に好かれようと一応頑張ってはいた。
犬にはどこかのお客さん位にしか思われていなかった。
犬はまるで夫の事を把握していたかの様だった。
小さい体で、「僕が家族を守るんだ」と思っているみたいで、私を助け、癒してくれ、子ども達の成長を見守ってくれた。
夫よりずっと信頼でき、癒してくれる存在だった。
その犬も天国に旅立ち、寂しくなった。
夫に亡くなった事を伝えると「いい犬だったのに、ショックだなあ。」と言っていた。
が、その後、夫から宅配便が届き「犬の餌を貰ったから食べさせて」とメールがきた。
亡くなった事をそんなに簡単に忘れるものなのか。
嫌がらせではないだろうが、何をしても人の心をイラつかせる。