S子は、子どもの時から、一時的に反抗しても結果はいつも父と兄の意見に従う娘だった。


受験校も、自分の行きたい学校は反対され、父親が決めたところに入った。面白くなくて、勉強を放棄し、心を病んだ時期もあった。
結婚も、結果的には親に押し切られて決めた。


成長するにつれ、お兄さんがS子の行動に口を出し始めた。


友人との約束も、「兄がいくなと言ったから」と言って断ったり、「兄が」「父が」が口癖のようになっていた。



そんな彼女に、友人たちが
「いい加減、たまには自分の意志で行動したら」と彼女に不満を言った事があったという。


すると、その日の夜、S子はある友人に電話をかける。

電話にでると、突然お父さんが「うちの娘にこんな事を言ったそうだね。うちのやり方に口をださないでほしい。」と言ったというのだ。

驚きと恐さで黙っていると、次にお兄さんがでてきて「わかった?妹に余計な事を言わないでね。妹が迷惑してるんだよ。」と更に念をおしたらしい。

そしてS子は、「そういうことだから。」と言って電話をきったのだ。

結婚しても何も変わっていないんだな…と私はその事を思い出していた。

実家から追い返されたS子は、仕方なく結婚生活を続けることにした。

もう帰る場所は無いと諦めて。

まだやり直しはできた年齢だったのに、子ども2人を、実家の協力もなく育てる自信が無かったのだろう。(そういう苦労を女性が負う世の中って、いつも納得がいかない。その弱い立場につけこむモラハラ夫が多いことも。)


それから今日まで、長い年月が過ぎた。


S子は、気持ちを切り替え、子どもさんの成長を生きがいに、頑張っているんだろうなと想像する。

ご主人は彼女よりずっと年上、今頃は老人みたいなものだろう。

今ではS子の方が強くなっているかもしれない?


年賀状の写真を見ると平和に過ごしているようだ。


何も知らない人が年賀状の家族写真を見ると、そんなゴタゴタがあったとは思わないだろう。


そう、上辺ではわからない。隣の芝生は青く見える。皆悩みを乗り越え、頑張っているんだ。


ポイント!☆幸せそうに見えても、実はどこのお宅もいろいろ闇を抱えていると思えてくる。ふさぎこんでも、文句言っても変わらないのなら、明るく生きた方が勝ちかもしれない。