「そうこうしているうちに、しびれをきらした紹介者の親族が来て、今日はっきりさせろって迫ってきたの。」

「この人はいい人よ。いいわよね?」

と強い口調で言われ、黙っていたら「OKってことね?はいこれで決まりね。良かった良かった!」と押し切られ、その場一同から拍手、祝杯をあげる宴会まで始まったそうだ。

「やっぱりお断りします、と言うつもりだったのに、言えなくなって、もうその場で諦めたわ。もう私の人生どうでもいいやと思った。」と笑いながら話すS子。

ニコニコと作り笑いをして、自分を騙して生きる事にしたという。

「東京に行けるのだからいいや。東京に行くために決めた結婚なんだ。」と自分に言い聞かしたらしい。
「良い人そうだし、結婚したら案外正解だったと思えるかもしれないしと思ってみたけど、私は絶対あの人を好きになる可能性はないと思った。」のに、自分の気持ちに蓋をした。

ただ、お母さんは、彼女の味方だった。S子の気持ちを心配してこっそりと声をかけていた。

S子は、「大丈夫、心配しないで」とお母さんにも笑顔で答えたという

その後、S子から結婚式の招待状がきたが、遠方に住んでいた事と、運悪く自分の大事な用事と重なってしまい出席できなかった。

ご主人の顔は写真でしか知らない。

写真では、確かに彼女の好みではなさそうだが、真面目そうで堅実な人に見えた。

それから数年後、東京で彼女と会った。

その時の話では、ご主人は家族思いの優しい人のようだった。

ただ、年齢の割に独身時代の貯金が少なかったとか、給料を部下との付き合いで使ってしまうとかを愚痴っていた気がする。

でも、ちゃんと平穏に家庭を切り盛りしている様で幸せに見えた。

2人の子どもさんにも恵まれていた。


S子からの年賀状は、毎年家族写真が送ってくる。
それで様子を何となく知る事はできた。

私は夫と一緒に写った写真なんて絶対友人に送りたくない。どっちみち、家族写真なんてとる事が不可能だ。

家族写真を送れるって事は、ご主人とうまくいっているっていう事かなと私は勝手に想像していた。

東京で会ってから5年後、実家に帰省した際、連絡してみたら偶然彼女も帰省しており、会う事ができた。
この時のS子の話には驚いた。
 

感想!☆自分を騙してもいつかは苦しくなる。結婚は一生を決める大事な事。自分を大事にしよう。と、自分の反省。