りんごの嘆き

人生の後半もだいぶ過ぎた主婦りんごの嘆き。これからは自分らしく生きる。最後は笑って終わりたい。

2018年12月

当時は、毎朝会社に着いてから朝礼が始まるまで、M子さんは私にいつもくっついていた。
1人でずっと何か喋っている。自分の事を。
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自分の過去の話もしてくるが、私の話は聞こうとしない。その過去の話も次第にどこまで本当なのかなと疑わしく思うような内容だった。
ただ、誰かに聞いてほしいのだろう、喋ることがストレス発散なのだろうと思った。
           

私としては、気の合う人は他にいて、もっと他の人とも話したいのだが、M子さんは割り込んできて邪魔をしてきた。
この土地に引っ越してきたばかりの私は、方言がよくわからず、時々その意味を聞き返す事があった。

ほとんどの人が、方言はあまり使っていなかったが、M子さんは、私の前では素をだすので、方言で早口で話す事が多かった。

私も早く土地に慣れたくて、方言も覚えようと思った。M子さんが、難しい方言を使った時に「今の○○というのは、どういう意味か教えて。ここの○○弁だよね?」

と聞いてみた。すると
「え?そんな言葉使ってないわよ。私、方言なんか知らないわ。それにその言葉は標準語よ。」と急に言葉使いが変わった。


方言と言われて、ムキになっていた。
「どうして?○○弁とてもいいじゃない。早く覚えたいから聞いただけよ。」と言っても顔がひきつったまま。

M子さんは、馬鹿にされていると思ったのだろうか。地元で誰もが使っている言葉だし、堂々と使って当たり前。馬鹿にされると思う事がとても変だよと思った。


私は自分も地元で方言使うし、馬鹿にされるとかされたと思った事もない。むしろ、教えてと言われてどんどん友人に教えた位だ。

M子さんの価値観は、そうなんだろうな。”都会的、お金持ち、男性に好かれる、”それがM子さんの行動から見て、彼女の人間的価値なのかなと感じた。


ある時、私の子どもはまだ小さかったが、M子さんにこんな事を言われた。
「近くに高校がいくつかあって良かったわね。通うのが楽ね。しかもランクの低い学校ばかりで良かったわね。お宅は難しい学校は行けないでしょうからね。私の甥っ子は、頭が良くて△高校なの。家から遠くて通うの大変みたい。」

何も我が家の事を知らないのに、勝手に決めつけて話す事に驚いた。
M子さんはとにかく相手の顔も見ないで1人事みたいに喋りっぱなしなので、何かにとりつかれたようなのだ。

もっと驚いたのは、私は子どもがおり、M子さんは子どもをこれから産みたいと思っていた時。

欲しいがご主人が協力してくれないとか、そんな愚痴もよくこぼしていた。

それは私も素直に聞いていた。するといつのまにか私まで「子どもができなくて悩む主婦」に設定されていた。
M子さんに言われたのだ。
「私はまだ若いから可能性あるけど、あなたは歳からいってもできにくいから大変ね。子ども欲しいでしょう?可哀想に。」

え?子どもがいると知っているのに?これは変!
「いや、私子どもいるし、もういいし」と言ったところ、M子さんは、目をそらし聞こえないふりをした。


M子さんがストレスになってきた。避けたいのに避けられない事が苦痛になった。


 

社員の男性達は、全員既婚者で、落ち着いた感じの人ばかりだった。


その中に、朝礼のスピーチで、毎回沖縄について問題提起をする人がいた。沖縄出身で、当時から「もっと基地の問題を日本人皆に関心を持ってほしい」と話していた。


パートさん達も、社員の人たちも、興味なさそうに誰も話題にしていなかった。

昼食を外で食べようと数人のパートさん達と一緒に社外に出た時、男性社員数人とたまたま一緒になる事があった。

その中に、沖縄の話をした人がいたので、私は歩きながらその人に話かけた。「沖縄の問題、私も興味ありますよ。沖縄には友人もいるし、話は聞いています。」と。

「そうですか!」と言って、その人が私に沖縄の話をしようとしたその時だった。

「●●さぁん!見いーっけた!」と言ってニコニコしたM子さんがその男性に近づいてきた。


振り返ると、アイドル風な「うふっ♥」と言った感じの子どもみたいな表情と動作をしたM子さんがいた。

ハッキリ言って、M子さんにアイドル風は似合わない。


普段の姿と違い過ぎる。いつもしかめた顔で歩く人。この時は、ぴょこぴょこと身体を揺らして、手を可愛くまげてポーズを作る。

しかめた顔よりも可愛らしくする方が感じは良いが、でもとても違和感がある。

親しくも無い、仕事以外で話した事もない相手に「見いつけた!」と言って、べたっとくっつく。

男性社員も違和感を感じた様で、彼女を無視し、真剣な顔で私の沖縄の質問に答えてくれようとした。

お店まで歩きながら話すので、時間も無かった。

なのに、再び「ねえー。○○さあんてば。お昼一緒に食べましょう。どこにしますかぁ?」みたいな、一段高い甘えた声で、彼の話を遮った。

私は、M子さんに抵抗してまでそこで話す気もなかったので、彼とM子さんから離れて「また今度。」と言ってさっさと前を歩く事にした。


M子さんはその社員にお昼ご飯を食べる時も隣にくっつき、店を出てから会社に戻るまであの調子のまま離れなかった。

私はわざとその集団から離れて歩いた。


その後、M子さんは男性なら誰にでもこういう態度をとっていた。

普段、退屈になると私にくっついてきて、しかめた顔と低い声で、「全く家の爺さんが!」「早く出ていけと言いたいよ」などの愚痴を吐き出していた。アイドル風のM子さんとはまるで別人だった。



私にターゲットをしぼったM子さん。私より10歳若く、子どもさんはいなかった。

とにかく良くしゃべる。隣に来てずっと話しているので、私はただ聞くだけ。

「最近家を建てて、ローンが大変なのに、1人暮らしの義父が突然同居してくれとやってきた。旦那さんは抵抗したが帰らない。調べたら義父は借金まみれで、実家も売り払っていた。
子どももいないし、昼間家にいても義父と二人は苦痛だし、家政婦扱いだから仕事にでることにした。」と言う。

毎朝、私に昨夜はこうだった、と愚痴をこぼしていた。

私は、いつも聞き流すだけで、自分の家の事はいっさい話さないので、平凡な幸せな奥様と思われていた様だった。
色々聞かれるより、良かった。

M子さんの席は私の隣。仕事は、てきぱきしていた。


わからない事は担当の社員にその都度聞きにいく事にしていたが、M子さんがなぜかついて来る様になった。


そして話に割り込んでくる。

休み時間、私が他の人とお喋りしていても割り込む。私に話をさせない。


それまでしていた話題とは関係ない自分についての話ばかり、始める。
話の中心になっていく。


その後、周りに人がいなくなると、私に寄ってきてまた家の愚痴を話し始める。

「最近は義兄まで、家に入り込んできたのよ。しかも彼女まで一緒に。その人私より年上で、住む家も無い浮浪者みたいな人なのよ。ご飯も私が作るのよ。食費も私たち夫婦が負担しているの、もう耐えられない!早く出て行ってほしい。でも、義父が息子が可哀想とか言って、ひきとめるのよ!私たちの家なのに!」
と訴える。


「子どもも作りたいのに、これでは益々できないわ。ただでさえ、旦那が作りたがらないっていうのに!」とよくこぼす。

どうやら、ご主人の事は大好きみたいだが、ご主人から愛情表現が無い事にも不満が溜まっている様子だった。
確かに家がそんななら大変だなと同情はしたが、M子さんを見ているとどうもその大変さが伝わらないのだった。

お金持ち風奥様パートさんと、子どもの学校の話をしていると、会話に割り込んできて、「私もブランド好きなんですぅ。いつもお買い物に行ってるの」と言って、「私もセレブなんです」アピールしてきた。私に背中を向け、絶対にお金持ち風パートさんと話させないぞという体勢をとる。私が言葉を発すると、上から声を出して消し、聞こえないふりをする。

M子さんて少し変わってて、面白い人だわ。こんな人初めてだ。この土地には面白い人がいるのね。

家が大変なのに、パワフルで凄いわと思っていた。



昔の職場の話に戻ろう。IMG_3610


知らない土地に引っ越してすぐに始めたパート。


新規部署だったので、一斉採用で、数人の主婦が一度に採用された。


オフィスには、若い女性社員たちとおじさま社員たちがいた。



私たちの仕事は若い女性社員が教えてくれた。

結婚してからのパートは、営業の仕事が多かった私にとって、久し振りのデスクワークだった。と言っても、一日に与えられるノルマみたいなものがあって、毎日上司に成果をチェックされ、競わされて、結構神経を使う仕事だった。


同期のパートさん達は、皆私より年下で、シングルマザーもいたし、エリートご主人の奥様風な人、新婚さん、義両親と同居で忙しい若い奥さん、などそれぞれ個性的だった。


私と仲良く接してくれたのは、若いシングルマザーだった。離婚したばかりで、心の傷も癒えないまま、赤ちゃんを抱えて頑張っていた。鬱になり、まだ薬が離せないと言っていた。保育園から電話が何度もかかってきて、早退する事もよくあった。とても魅力的な素敵な女性だった。

不思議なのは、女性社員は休み時間も団体で行動しており、パートの人とは話そうとしなかった。

お昼休みは、休憩室の中が、はっきり二つの集団に分かれていた。

それも次第に社員の女性から声をかけられる様になり、お昼には一緒にお弁当を食べる機会も増えてきた。


私は、気のあう人達と、職場だけの付き合いと割り切って過ごしていた。
それなのに、同期の1人が私の平和な人間関係に入ってきた。良く言えば、私と仲良くしたがり、執着してきた。


自分の仕事の話題は、身元がばれそうなのであまり書けないのだが、だいぶ前の話なら大丈夫かな。

私は夫以外では、有り難い事にさほど深刻な人間関係に悩んだ事は無かった。

あったとしても、誰にでもある、その人との相性が良い、悪いのレベルだと思う。
(私が鈍いところもあったりして?)

夫との事に比べれば他人との関係なんてどんなに楽に感じるかということかもしれない。
ご近所付き合いもさほどうるさく無いし、苦手なママ友からも解放されて気楽になった。

強いてあげれば、だいぶ過去の話だが、この人苦手。あまり関わりたくないなあ、と思えた人がいくつかある。思い出すのは、今の土地に引っ越してきて最初の職場。


子どもは転校、私は、正社員にしてもらう話があった会社を辞めて夫の転職の為に引越してきた。

すると夫はその会社もすぐに辞めてしまったのだ。
この時も、夫の大ホラ話に騙された。

夫への怒りで毎日、夫婦喧嘩していたが、夫は話をはぐらかし、毎日遊んでばかりだった。

この時の私は、ストレスで体調に異変が出始めていたが、すぐに仕事を探さないとと焦っていたのだった。


続き

私は、帰宅した後、夫を責める気も起きなかった。それより、夫が自分をけなした私を非難してくるのかと思っていた。


現実は、夫はニコニコして「いやあ、流石だね。上手いね。その手があったかと思ったよ。」と言う。


「僕の事をわざと悪い風に話してさ、演技が上手かったね。苦労している可哀想な奥さんのふりするとはね。感心したよ。おまけにさ、君の演技のお陰で、向こうの本音がわかった。僕は騙されるところだった。被害に遭う前に縁が切れて良かったよ。」
と、全く物事の本質を理解していなかった。

確かにY氏は予想通り危険な人ではあったが、それをお前が言うな!だ。


私は嘘も言っていないし、演技もしていない。

あれが全て嘘だったと夫は思い込もうとしている。

そもそも、もし、私が乗り込んで行かなかったら、どうなっていたのだろうか。

自分のした事、人の忠告を聞かなかった事も全く反省していない。

何でも自分の都合の良い様に、物事を作り変える、絶望的な感じがした。


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