
ケイさんが結婚して1年が過ぎた頃、私は亜紀のアパートを学校の用事で訪ねた。
実家のお母さんが来られていた。挨拶をしたがいつもと様子が違っていた。
私は帰ろうとしたが、引き留められた。
亜紀とお母さんは無理に笑顔を作っている気がした。居心地が悪くて私はテレビを見るふりをした。
無理に笑ってもすぐにお母さんは暗い表情になる。いつもは色々話しかけてくれるのに黙っている。
そこへ電話が鳴った。亜紀が電話をとり、「えっ!見つかったの?今から行くわ!」と叫んだ。
「ごめん、今から母と出かけないといけないの。また今度ゆっくり話すわ。」と言われ、私も一緒にアパ―トを出た。
亜紀とお母さんは、切羽詰まった顔で飛び出して行った。ケイさん夫婦に何かあったのかもしれないと何となく感じた。
私は何も感じていないふりをし、何も聞かなかった。
後日、学校で亜紀が話しかけてきた。
「この前はごめんね。実は、お兄ちゃん夫婦と連絡がとれないと、お母さんが心配してこっちに出てきたの。私が電話しても出ないし、二人で兄の家まで行ってみたの。
そしたら兄夫婦はいたんだけど、ミキさんが私たちの顔を見た途端、家を飛び出してしまって行方不明になってたの。私たちの事が嫌いみたいなんだけど理由がわからなくて。母がショックを受けてあれから元気がないの。」
と説明してくれた。
なぜミキさんがそこまで義実家を嫌うのか、結婚を一時的に反対されたのを根にもっているとしても、結果的には祝福されて結婚できたわけだし。
私には理解できなかった。