その後も、あや子さんは小さいトラブルを起こし続けた。彼女の事を良く言う人は誰もいなくなった。

仕事帰りに仲間で飲みに行くと、誰もが彼女を辞めさせてほしいと愚痴った。

私は別の部署に異動となり、あや子さんと会う機会が減った。


私宛に、時々先輩や他の社員さんから個人的に電話が来て、愚痴を聞かされた。

日々、深刻になっていくのがわかった。あや子さんのいる部署の人たちが日々、精神的に参っていくのだ。指導係の先輩が一番辛そうで、ついに体調を崩して入院してしまった。

1人の存在が、こんなに周りに影響を与えるものなのか。と驚いた。

学校でも、1人悪質ないじめっ子がいるとクラスの雰囲気が変わるし、逆に良いムードメーカーがいると皆が仲良くまとまったりする。
1人と言えど、人の持つ影響力は馬鹿にできない。


話してわかる人ならまだ良い。人格に問題があり、虚言癖があったりサイコパスだったりするとどうしようもない。

あや子さんは、いくら注意しても説得してもかわらない。逆に相手の心を蝕んでしまう何か恐ろしい物をもっている様に感じた。

私に対しては、何故か丁寧で素直な態度は変わらなかった。だから、社員さんは、唯一仲の良さそうな私に何とかしてくれと泣きついてきたのだろう。


でも、直接のトラブルが無いのに、私があや子さんに注意したところで、おそらく社員さんの嘘だと言って社員さんを陥れようとするだろう。解決するどころか更にややこしくなりそうな気がした。
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先輩が入院した事から、やっとあや子さんは配置転換になった。

上役は「辞めさせたいが、コネ入社なので辞めさせられない。なら、本人から自主的に辞めるように仕向けるしかない」と、あや子さんが辞めたくなる仕事を与えることにしたらしい。

窓際族というか、部屋の端っこに1人だけポツンと机があり、仕事は雑用のみ。
掃除や電話番や荷物運びなど、地味な仕事。ほとんど暇で、仕事が無い。
仲良しの人もおらず、普通の人なら針の筵だろう。

「これは辞めろという事だな」とピンとくる。

皆は、ようやくこれで彼女から解放されるかもと喜んだ。あや子さんは嫌われてはいたが、誰も態度にはださず、普通に仕事をしていた。彼女をを無視したり、虐めている様なそんな雰囲気は全く無かった。
逆に、皆が弱り、彼女だけが元気で、女王様な雰囲気になっていた。上役のコネだからという圧力もあった。

そんな話を聞いた後に、あや子さんから私に電話がきた。

「私、異動になったんです。私の優秀さがやっと認められました。会社で一番大事で責任の重い仕事を任されました。」と言う。

見栄を張っているのではなく、本気でそう思っている様だった。嬉しそうに話しているのだ。

私は、何も知らないふりして、詳しく聞いてみた。
どんな仕事になったの?と聞くと

「電話に出るのは、普通じゃできません。優秀じゃないと話せません。電話番は、会社の顔となるのですから、私みたいに会社の代表としてふさわしい人間しかできないのです。今まで、他の方の電話の応対を聞いていましたが、最悪です。私が優秀である事をやっと上が認めたのです。でも、皆が妬んで、困ってます。」
と意気揚々と話す。

(まともに相手できる人ではないなと、これ以上仲良くするのはやめないとやばいな)と心の中で思った。

自然に彼女と離れる事はできないかなと考えて居た。


そんな時、事件が起きた。