あや子さんのロッカーに、専務あての荷物が置いたままになっている理由がわからない。
しかも箱がはみ出していて、ハンカチはかけてあったけど、見つかってもおかしくはない置き方だ。
盗む意識があったなら、中身を出して、箱を捨ててもっと確実に隠すだろう。

それに、封をしたままで置いたままなのだ。
いったい人の荷物をどうするつもりだったのか?理解できない行動。

ロッカーを探した自分は、あや子さんが危ない人なのではないかとこの時に予感がした訳だ。

この時、あや子さんがいる前で「見つけたわ!」と言うと、とんでもない事になりそうで言えなかった。後から色々彼女の性質を知った時、この判断は正しかったと思った。

私が仕組んで冤罪をかけられたと、あや子さんが泣いて騒ぐ可能性があった。

箱を発見した事は、そっと専務と先輩にささやいて、定時にあや子さんが帰るまで、我慢してとぼけていた。

彼女が帰ったのを確認後、先輩を彼女のロッカーの前に連れて行った。

「これです」と箱を指さすと先輩がびっくりしている。

すぐに箱を取り出し、専務に渡した。その場面を見て「どこにあったのか」と当然皆から聞かれた。

先輩が小さい声で説明したが、誰もがすぐにあや子さんの仕業だとピンときていた。
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「やっぱり…そうじゃないかと思っていた」と言う声が聞こえた。
「あいつおかしいよ。仕事もミスだらけで、怒ると泣くし、かと思うと人をじっと見てにやっとしたり。」と言う男性もいた。
「本当に大学出ているのか。有名大卒?信じられない。」と一気に不満が噴出した。

そうか、先輩だけでは無かったんだ。

専務が「見つかったからもういいよ。あや子さんにも何も言わないよ。皆も知らん顔しとけよ。」
と言う。

「でも、これは盗難ですし、社内で起きた事ですから注意しないと」と先輩が言った。

「いや、いいんだ。病気の人に何を言っても無駄だろう。注意してもトラブルになるだけだよ。可哀想だと思って、彼女を憐れむしかないよ。皆も彼女は病気だと思って労わってくれ。」と専務はその場にいた人達に話した。


意外だったのは、接触する機会の無い専務があや子さんのそんな性質を知っていてとっくに諦めていたことだ。

先輩が、私に向かって「”病気の人”って、ひどい言い方ね。専務は、彼女を突き放しているわね。何の期待もしていない。」と苦笑いで呟いた。

それはそれで、上役のコネ入社だからといって、誰も注意できず、まともに給料を貰う彼女に対して、他の社員には納得のいかない事だった。

翌日、皆は何も無かった様に、あや子さんには箱の事を誰も話題にしなかった。

自分のロッカーから箱が無くなっても、気が付かないふりのとぼけたあや子さんだった。