先輩の苦労も真実のようだし、私の目の前のあや子さんも嘘には思えず混乱していた。部長の件で、少し自意識過剰なところはあるなとは感じたが、そこまで非常識な人には見えなかった。

そんな時、専務宛に奥様から電話がきた。何かもめているような、困って居る様な雰囲気で電話を終えて、専務は大きなため息をついていた。

専務は単身赴任していた。「どうしたのですか」と社員の1人が聞いた。

専務は「妻が僕あてに会社に宅配便を送ったというんだ。でも届いていない。いつもなら受け取った人がすぐに僕の机に置いてくれるからね。しばらく待っていたけど、もう1カ月過ぎても届かない。妻が不機嫌でね。大事な荷物なんだよね。困ったよ。」

「え?それは大変ですね。私が宅配会社に調べてみます。」とその社員が宅配会社にすぐ電話した。

すると「1カ月前に届け済だそうですよ。ここ宛に。受領印もあるそうです。」と言う。

え~っ。届いていたの?と言う声が聞こえた。

専務は、慌てて自分の机の周囲を探し始めた。でも、段ボールは無い。


「おかしいなあ、誰が受け取ったのだろう。受領印は誰の印鑑だったか聞いた?」
「はい。あや子さんの印鑑だったようです。」

え~っと再び声が。

あや子さんは「1カ月前に宅配便を受け取った記憶ある?専務あての荷物だけど。」と聞かれると
「さあ、覚えていません。仮に受け取ってもすぐに専務に渡しますよ。」と答えていた。

専務は、「僕が受け取って、どこかにやってしまったのかな。まさかねえ。段ボールだからね。おかしいな」と悩んでいる。

とりあえず、奥様には届いていたが紛失している事を伝えて、全員仕事に戻った。
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先輩は、あや子さんに「ねえ、あなたの印鑑が押してあったのよ。どこに置いたか、ちゃんと思い出してもらえないかなあ。専務が困っているの。」と小さな声で話していた。


あや子さんは、全く気にせず「さあ、覚えてません。専務が捨てたんじゃないんですか。私が無くしたとでもいいたいんですか?それ、ひどくないですか?」と他人事だった。

そのやりとりを見て、あ、これか!と思った。遠くから見て見ぬふりをしていたけれど、その時のあや子さんの顔付きは怖かった。

自分が受け取った荷物が紛失したと聞いたら、責任を感じて真っ先に思い出そうとし、探し回ると思う。ましてや新入社員ならかなり焦ると思うが。


私は、嫌な予感がして、ロッカー室に行ってみた。

全員ロッカーに鍵はないので、コート類だけをかけるだけで皆あまり使っていない。貴重品も置かない。だから入りやすい空間。

あや子さんのロッカーの前に行ってみた。すると戸がしまっておらず、というか物が挟まっていて閉められない状態。

その置いてある物をそっと見てみた。ハンカチがかけてある。

もしやと思い、ハンカチをめくった。そこには専務宛の送り状が貼ってある箱があった。

何故?あや子さんはこれをずっとここに隠しているのか?どういう事?

私は頭が混乱した。