その後、結局は小説は送って来なかったので、感想をいう事もなく、たまにメールのやりとりをした。

内容は、同級生の話題や、共通の趣味の話題などだ。

メールが来たら、返事をする程度。たまに手紙も来た。小説を書く人なので、紙に文を書く事が好きだとかで、便せんでは無く、原稿用紙に書いてきていた。

小説は趣味で書いているのだろうが、感想うんうんは手紙のやりとりをできるかどうか、確かめたかったのかもしれない。
その辺も回りくどくて、何だか引っ掛かったが、まいいかと流していた。

あの頃は、A君だけでなく、他の友人達とも手紙やメールのやり取りを頻繁にしていた。

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ある時、メールで、A君が職場の愚痴をこぼしていた。

私じゃなくて、奥さんと話した方がいいのではと思い、「私でなくて、奥さんに聞いてもらった方が良いのでは?理解ある人なのでしょう?」と言った。
すると「いつも聞いてもらっているよ。この前も奥さんからこう言われたんだ。家電はいっぺんに壊れるしね。って。」

この時も、ん?何が言いたいのかわからない…と聞き返した。

すると「うちの奥さんは、家電はどうせ同時に壊れるし、その時お金が急に必要になるけど、それを払えるお金さえあればいいって言うんだよ。」と言う。

更に、ん?だから?と聞くと

「今それだけの給料さえあればいいんじゃない、っていう事。沢山稼がなくても、何とか生活できればいいよって言ってくれるんだよ。」
と、やっと結論に。


最初からそう言えばいいのに。イライラ…
「良かったね。良い奥さんで。幸せね。」と答えたが、それを言わせられるまで回りくどいのが疲れる。

おっとりした性格のA君だったが、一度だけ感情的になった事があった。

「どんな旦那さんが理想なの?」と質問された。
私から私的な話を聞きだそうとするA君だったが、乗せられずに家庭の話はしない私。

夫の事を聞きだそうとしているのかなと思った。

「自分の今の立場で言えば、真面目に働いてくれて、子どもを大事にしてくれるならそれで充分かな」と答えた。当たり前の話だと思ったが、夫に欠けていたものを答えにした。


すると、突然A君が不機嫌になった。また私は、ん?となった。

この理想は、夫にはあてはまらないが、A君ならぴったりだろう。家族を愛し、真面目に働いているのだから。

なのに、「失礼だよ!僕を馬鹿にしてるの?」と言うのだ。