そう言えば、母は頭をどんな風にして葬儀に行ったのだろう。

寝たきりの伯母夫婦の「どちらかが葬儀となったら、髪が抜けた頭で人に会いたくない」とずっと気にしていた。
近所の人にも癌だとばれたくないと、いつもスカーフと帽子で頭を隠している。

弟も父も「年寄りなんだし、気にしなきゃいい」と全く取り合わない。

お嫁さんなら同じ女性として理解してくれるだろうと思っていたのに、嫁さんも「別にそのままでいいじゃないですか」とそっけなかったという。予想通り(笑)。

どんなに年をとっても、女性は女性のまま。心は若い時のままだ。自分に置き換えればわかると思う。
身体だけどんどん年をとり、肉体年齢と精神年齢のギャップに戸惑い、老いが悲しくなる事は誰にでもあると思う。

だからこそ、いつまでも清潔に、少しでも綺麗にしていたい。元気に見せたいと努力することは大事だと思う。

母は、美人でも知的でもないが、身なりだけはいつもきちんとしていた。
今でもお化粧はするし、髪はいつも気にしていた。服もこだわって買っている。
髪は大事だ、髪で印象が決まるといってもいい。
髪を気にする気持ちを何故、共感せず突き放すのか。

それで少しでも元気になればいい事じゃないか。と不思議だ。

入院中に、帰省していた私に「化粧水を持ってきて」と母が頼んだ時、弟が「持って行かなくてもいい、化粧なんかしなくていいのに」と冷ややかだった。
無視して持っていったが、女性なら化粧水やクリーム位は使いたいのは当然だろうに。

自分の嫁が指示すれば何でも言いなりになるのに、母に対してどうしてそうなるのだろう。

もしかして嫁さんに世話をあまりしないようにと言われているのかと疑ってしまう。

女性の髪のことはわからないから、と私に相談してくるとかお嫁さんにまかせるならともかくだ。「もう言うな」と母を黙らせていた。父、弟、その嫁さんまでも。

「葬式となると、室内でスカーフという訳にはいかないからウイッグが無いと困る」
「どこでどう買えばいいのかわからないし、誰も付き添ってくれないし、高い買い物だからしっかり選びたいけど1人では不安」と母は私に訴えていた。

結局私が、ウイッグ2種と帽子を2個買って渡した。

運よく気にいってくれ、似あっていたから良かったが、私が送らなければ母は帽子すら買っていなかっただろう。
娘が買ってくれたからと、母は父と弟に対してあてつける様に堂々と使っている感じだった。

ばつの悪そうな父と弟はもう何も言わなくなり、今は一緒に帽子を買いに行っているそうだ。嫁さんは更に不機嫌になった事だろう。(あほらしい)
正月にも「私の母はウイッグなんて使わなかったのに。」と母に言い返していたという。(そこまで言うかとため息。)
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「どうせ婆さんだから、爺さんだから」と老人を馬鹿にする人は、自分がその年齢になった時、自分の事もそう言って諦めるのだろうか。

病院や施設、訪問介護にしても、お年寄りを子ども扱いする人が多いのでは?

「~しましょうね~」とか「だめでしょ~」とか、何故ああいう言葉使いをするのか、不思議だ。

あるお年寄りの男性は「馬鹿にするな。目上の人に敬語も使えないのか」と看護師さんを怒っていた。当然だろう。

もし自分の父がそういう扱いされたら気分が悪いと思う。
どんな人にも、それまでの歴史がある。

老いの為に動けなくなっただけの事なのに、「何もできない子どもみたいな人」と言う今の視点でしか相手を見ない対応は失礼だと思う。

話は戻り、色々あるけど、私は親の近くに住んでいなくて良かったと思っている。