続き




久し振りの再会。

元職場の先輩は、なぜ私に会おうとしたんだろうと不思議だった。

私は、その頃、元職場の夢をよく見ていた。嫌な思い出を夢で整理しようとしているのかもと思っていた。

先輩は、世間話をするだけで特に用事がある訳ではなさそうだった。

話題がとぎれたので、夢の話をした。

深い意味は無く話したのだったが、先輩が反応した。
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そしてこう言われた。
「あの人の夢をまだ見るなんて、よっぽど辛かったのね。実は私も彼女には困っているのよ。当時助けてあげられずにごめんね。ずっと気になっていたの。」

この言葉は意外だった。あの女性上司とは仲が良さそうだったから。

仲が良いし、上司が気を使うほどの人だったから、愚痴なんてこぼせる相手では無いと思っていた。

先輩は、上司の事を批判し始めた。私の知らなかったことまで、次々と暴露し、心に溜まっていた不満を一気に吐き出した様だった。

もしかしたら、その為に私に会ったのかなと思った。

会社の中では、愚痴一つこぼさない、できた人。誰ともつるまない、一匹狼的な人。

だから、吐き出す相手がいなかったのかもしれない。

私はもう会社の人間では無いし、不満をわかってくれる人だと思ったのだろうか。

先輩が、こんな事を言った。

「彼女はね、あなたに嫉妬していたのよ。」
嫉妬なんてありえない。と思った。そんな材料は自分には無かったから。

元部長の事を、上司は好きだったのだという。(不倫になるが。)

何度もアタックしても相手にされない時に、私が元部長に気に入られている様に見えたらしい。それは全くの誤解であり、迷惑なことだ。

元部長に任された仕事を指導されている時とか、確かに彼女は不機嫌だったし、その仕事を私からとりあげていた。

そう言えば、社内旅行の時、女性上司がカメラを見せて「写してあげるからね」と皆に言った事があった。

ところが、終わってみたら、一枚も写していなかった。
全て、元部長だけを写していた。

あの時「主人が焼きもちやくのよ。部長しか写してないじゃないかって。ほほほ」とおかしな自慢をしていた。

変な人だなと思ったが、そうだったのか。

そう言えば、部長と二人で得意先に挨拶に行く予定があった。

部長と打ち合わせが済み、準備も終わった後、前日の夜中に上司から電話がきた。

「明日、挨拶に行くのは、あなた1人で行く事になったから。部長には私から断っといたから。」
と言うのだ。
これは、部長からの指示で行う仕事だったが、女性上司がぶちこわした。

結局、私が1人で行った。

部長に、報告すると「何かね、急に彼女(上司)が、不公平だと社内で不満がでていると言われて」と謝ってきた。
その話を先輩にしてみた。

すると「不満とかそんなの嘘よ。ただの嫉妬よ。仕事なのに、嫉妬しまくって邪魔していたのよ。」

と言う。

なんて馬鹿馬鹿しい。ほんとに迷惑だ。

先輩とお互い言いたい事を言い合って、すっきりして別れた。
別れ際に、先輩が「これで、もう夢には出てこないと思うわよ」と笑顔で言った。


本当に、それ以来上司は夢にでてこなくなった。