見た後は、もういいかなと思ったが、時間が経つにつれ、じわじわくるものがあり、また観たくなってきた。
ネットでのレビューを見ると、「感動した」「泣いた」「また観たい」というものが多い。
確かに勝手に涙がでてくる。感動ではなくて、あまりにせつなくて。
エルトンの音楽を楽しむ為に見に行ったはずが、名曲の数々がせつない動機で生まれていたと知ると、味わうというより、辛い気持ちで聴くことになる。
エルトンが売れればうれるほど、笑顔と派手な衣装とパフォーマンスに圧倒されるが、それも心を隠す鎧だったのかと、辛い気持ちでライブシーンをみることになる。
だから、知り合いのエルトンファンの人は、映画を観た後「期待がはずれた」と言っていた。
エルトンの曲とエルトンの良さをアピールする内容を期待していったようだ。
そこが、健在している本人の監修があるかどうかの違いだろうな。
亡くなっていれば、全く違う描き方をしたと思う。
私は、エルトンがこの映画で、親への屈折した恨みというか、愛情不足が根底にあった孤独な自分を終わりにしたかったのだろうと思う。どろどろとした病んでいた自分を映画で暴露することにより、区切りをつけたかったのではないか。
同性愛も悩みであっただろうが、根底は親の愛情不足だ。全てはそこにいきつく。
大人になっても、まだ親に認めてもらえず、怒りと涙を抑えられない子どもの心を引きずる自分がいる。いくつになっても、消えない心の寂しさから逃げられない。
「ハグして」と言っても、してもらえなかった可哀想な幼い自分を、大人になった自分がハグしてあげるなんて、辛いシーンだ。
少しでも似た様な体験をした事のある人は、ぐさっと突き刺さり、涙なしでは見られないと思う。
若い頃に名作が多いのは、悲しみが原動力になっていたからか。
良い友人がいるのに、孤独感から逃れられない。お金が入っても名声を得ても。
フレディと似た様な人生だ。
でも、エルトンは生きている。良かった。生きているから今は幸せになれた。
ラストでは、笑顔にさせてくれる。
彼が「映画をみて泣いた」という。納得できたのだろう。
イメージを裏切らない俳優の能力の凄さにも救われたし、俳優の演技や歌を楽しむという見方もあると思う。
現在子育て中の方が、この映画を観て子どもさんへの接し方を振り返ったり、ハグが増えたらいいなと思う。
当時の、まだ前髪のあった若いエルトンの動画を探してみた。
思い出した。青春時代を。
映画を観た後は、曲が違って聴こえる。そうかこんな心境で作ったのかとか、色んなシーンが浮かんできて更に心に響く。