私のあげた帽子がお気に入りになり、毎日かぶって散歩や庭に出ている為、汗で形がぐずれてきた。

1個だけでは飽きるし、もう1個帽子はあった方がいいんじゃないと言っていた。

母は帽子は似合わないと思っていたようで、これまで全く関心持たず、夏の麦わら帽子とサンバイザー以外は持っていなかった。


近所の人から、似合うと言われて上機嫌になり、もう一個、買いに行きたいからついてきてという話になった。バスでゆっくり行こうか、と話していたら、弟がやってきた。

母が頼んでいた届け物を持ってきた。これから帽子を買いにいくと言うと自分が連れていくと言い、車をだしてくれた。

その前に、弟に母が頼み事をした。脚立を棚の上にのせてあるから、落ちないようにヒモで括りつけてほしいと言っていた。それだけの事なのだが、弟はふんと言っただけでやらない。


徹底して家の中の事は手伝わないつもりなのか。
ならば私は、「もっと違う場所に置いたら。ヒモでくくらずにすむ安全な低い場所に。」と言ってみたが、絶対場所は変えられないと母が言う。
でも、括る位置が年寄りには危険で、弟もやらないなら誰がやるのか。

まず高い場所で私には手が届かない。そんなことまでしたくない。弟がいるのに。

弟は、外に出る事は喜んで車を出すのだ。
運転が好きだし、自分も気分転換になるからだそうだ。いつもは、店に母を1人放置して、自分はパチンコで時間を潰す。

家で嫁さんの顔色を見て過ごすより楽だからだろう。

母は、可哀想だから私が外に連れ出してあげるんだと言っている。
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で、帽子を買いに行き、あれこれ探してやっと見つけた。

弟は、どれでもいいじゃないかと似合わないのを勧めて来る。私がお洒落なものをいくつか選んでやっと決まった。

気に入った帽子がまた増えた母は、上機嫌。

そして、弟にしきりにお礼を言う。「あなたのお陰で、良い帽子が買えたわ。良かった。助かった。」と何回も頭をさげていた。

え? 弟のお陰?そもそも、最初弟は「脱毛なんてどうでもいいじゃない。」と無関心だった。帽子なんかいらない。禿でも気にしなきゃいい。婆さんなんだからというノリだった。


私が帽子を買って持って来なければ、まだ母の頭はそのままで、スカーフの上にサンバイザーというおかしな格好をしていたはず。

帽子を買いたいと言っても、弟に反対されて我慢していただろう。

こういう所が、本当におかしい。
近所の人には「息子が買いに連れて行ってくれたの」と自慢していた。


でも、いいわ。弟は、少しは私の言いたい事がわかっただろう。
脚立が棚から落ちても、括らなかった弟が悪くても、置き場を変えなかった親のせいとなる。弟の我儘は誰も話題にしない。

そう言えば、母が一瞬だけど「あの子は、私の育て方が悪かった」と口走った。心の中でわかっているのなら今はそれでいい。