昨夜、母から電話がきた。

入院中、退屈な時は必ず電話がくる。こちらも声を聞いて本人から様子をきくのが一番安心だ。

「午後から点滴が始ってね、夕方には終わったわ。あっけなくてなあんだ、って感じ。副作用も何にもないし。ご飯は美味しくて、足りなかったわ。」と言う。

良かった。高齢だし、薬は弱くすると聞いていた。若い人なら強い薬で完治めざして、早く社会復帰させようとするから、こんなものではないと思う。

「これで点滴は終わり。あとは飲み薬だけだって。腸で入院した時にずっとチューブが入っていたことを考えたら、何てことないわ。」と声が明るい。
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副作用は後からでる事もあるから、何かあったらすぐ看護師さんに言ってねと言った。

大きい病院で、研究も進んでおり、良い薬も使っているのだろう。血液の癌に対する抗がん剤は、よく効くそうだし、副作用をおさえる薬もしっかり使ってくれているようだ。

「先生の説明が深刻で、怖い治療みたいに聞いていたから気がぬけたわ」と言う。

「お母さんが持病が無く、同じ年齢の人と比べて体力もあったからそれですんだのよ。お医者さんの説明は正しいのよ。油断しないで。」と話した。油断して、また無理されたら困る。

「入院した日はぐっすり眠れた。家で動いていたし、あまり眠れてなかったから疲れがたまっていたのね。」と言う。
家が一番良いのだろうが、疲れるのか。やはり治療への不安と父へのストレス、行動の制限に対する焦り、色々あったのだろう。
今のうちにしておかなくちゃと、色々家の中の事をやったようだ。

押し入れをかき回して埃をたてた事だろう。

これから抗がん剤を飲み始めたら感染しやすくなるので、そんな事はしてほしくないが。
家の中の事は、弟に頼んでも嫌な顔をしてやってくれないという。

「あなたがいたら、楽だったのになあ」と母がぽろっと言った。

(娘は何でも嫌な顔をせずすぐ動くから頼みやすい)のだそうだ。そんな事はないはずだけど、利用しやすいということだろう。弟嫁に比べれば、そうだよな。


後悔したくないので、私は自分のやりたい事をやっていくだけ。
退院前にはまた帰省して実家の掃除や両親の世話などしようかと思う。きっと家の中は悲惨な状態になっているだろうから。

おそらく、今度退院したら、これまでと違う気持ちで母は日々を過ごすだろう。
後悔の無い終わりかたを考えて一日を大事に過ごすだろう。抗がん剤治療した事で、開き直った感じがする。