続き


会社が忙しい時期には、Mさんも手伝いに行った。娘さんの様子も見がてらだったが、驚くことに例の件以来、副社長の母親も我物顔で手伝いに来ていた。


副社長とその母親が、大きな態度で振る舞い、社長と娘と奥さんは、遠慮がちにしていた。まるで副社長が社長であるかの様だった。

Mさんは、従業員に気を使わせないよう、これまでも気を使い、謙虚な態度をとり裏方の仕事を手伝っていた。それを良いことに、副社長親子はふんぞり返っていた。

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そんなある日、副社長が誰かに電話をしていた。そしてこんな事を口走っていた。

「今、臨時のパートを使っているのですよ。若い子とと老人ですよ。若い方は頭が足りなくて、老人はとろくて役に立たないのですが、うちの会社はそんな人でも雇ってあげる、いい会社なんです。」

誰が聞いても、これはMさん親子の事を悪く言っているのだとわかった。臨時のパートなど雇ってはいないし、二人というならMさん親子しかいなかった。

何てひどい事を言うのだろうか。従業員は聞いていないふりをした。

社員の1人が、社長にその話をした。奥さんと娘さんをそんな風に言われれば、社長だって副社長の本性に愛想がつくのではと期待した。

すると意外に冷静で「わかった。副社長に聞いておく。」とだけ言われたそうだ。


社長は副社長が嫉妬でそんな事を言うのだろうと、わかっていた。

そこまで自分に執着される事は、社長にとっては、むしろ気持ち良い事だったのかもしれない。

彼女に注意したところで「奥さんといつ別れるの。私は子どもまで諦めさせられたのよ。奥さんと娘に全てばらしましょうか」と言われてしまい、何も言えなかったのだ。

社長は、仕事面でも、私生活でも愛人に頼りすぎており、もう縁をきれない状況になっていた。


結局、「あの電話の内容は、うちの事では無くて他の人の話をしたらしいよ。誤解だよ。副社長は娘にも優しくしているだろう。」と社員は誤魔化されて終わった。


裏表の激しい副社長は、実は、Mさんの娘に裏で陰湿な嫌がらせを続けていた。

わざと仕事でミスをするように仕込んだり、教えて無い事を「それ何回も教えましたよね?」と責めたりした。

守ろうとする社員に対しては、辞めるように働きかけ、給料を下げ、無視をし、自分に抵抗する人は徹底して排除しようと動き出した。


結果、娘さんは「会社を辞めたい」と言い出し、社長はそれを受け入れた。副社長が自分との関係をばらす恐怖もあり、それが良いと判断した。


古くから貢献してきた社員たちも、全員排除された。電話をくれたあの社員も辞めてしまった。


Mさんは、協力してくれる社員を失い、会社の様子がわからなくなってしまった。残った従業員は副社長に媚び、気に入られた人ばかりになっていた。