Mさんにとって、部下の話は、予想していたものよりはるかにショックが大きかったという。


途中、Mさんは、席を立ち、お茶を入れ替えながら動揺する心を抑えていた。
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新しいお茶を入れて、座ると部下はこう続けた。

「奥さん、私は最初は奥さんに話す事ではないと思っていました。仕事の事は奥さんには関係ないですし、もし社長にばれたら何をされるかわからないです。でも、これから話す事は、奥さんにも教えるべき事だと思い、ここまで来ました。」

Mさんは、(まだ何かあるの?もうやめて)と思った。

が、聞いておかないと自分や子ども達に影響があるのなら無視はできなかった。


「奥さん、落ち着いて聞いてください」

「社長が東京に良く出張した時期があったんです。その頃から変わってきた気がします。私の事をもう必要ないと言いだしたのは、代わりが見つかったからなのです。おそらくその人を雇って、副社長にするつもりです。私に反対されるのは目に見えていますから、私の存在が邪魔になったのでしょう。

私がいなかったら、この会社はできませんでした。苦労した時代を知らない外部の人が僕より大事だと言う事は、どういう事かわかりますか?」

「女性です。社長は東京で知り合ったある女性に夢中になってしまっているのです。おそらくその人が社長を騙し、会社を乗っ取ろうとしている気がするのです。」


長い間、別居していれば、しかも社長という立場でお金もあり、見た目もダンデイなご主人なら、愛人ができる事は予想していた。

Mさんは、家庭を大事にするなら、浮気しても構わない、むしろ助かるくらいに思っていた。ご主人は、家庭を壊すような人では無いとわかっている。そういう責任感はとても強い人らしい。

癇癪持ちだとわかれば、相手もいつか離れるだろうし、DVのエネルギーが別の方に向いてくれるならいいと思っていた。
だから、女性の話は不快ではあったが、それほど心配はしなかった。


ただ、夫の暴走を抑え、うまくコントロールしてくれたその部下が辞めた上に、その部下に訴えられて、会社が愛人に私物化され、乗っ取られるかもという恐怖心の方が強かった。


夫はその女性に奪われるか、捨てられるかはわからないが、最悪、会社も夫も奪われると家族の生活が破綻する。

相手がどんな女性なのか、わからないだけに不安が強くなったMさん…。

                      続く