続き


高校を卒業し、私は県外の大学、K美は地元の銀行に就職した。
成績優秀だったK美は進学したかったのだが、家庭の事情で就職になった。


私の父は、どんなに貧しくても学問だけは必要だと考えて居て、借金してでも大学まではいかせたいという人だった。その点は男女平等で感謝しているし意外だったので驚いた。

家庭によって事情も考えも違うのだから、他人があれこれ言う資格はない。


進学先へ出発する前、お別れの挨拶に仲間で集まった。

皆でワイワイ騒いでいる時、K美がぼそっと口にしたのが聞こえた。
「大学に行く人の神経を疑うわ。親にお金をださせてまで、大学に行くなんて我儘だわ。甘やかされ過ぎよ」と呟いていた。もしかするとK美の親がK美にそう言っているんじゃないかと感じた。


私は聞こえないふりをしたが、きっとK美は悔しかったんだろうなと思った。

彼女の気持ちが良くわかっていたので、進学する友人達を笑顔で送る彼女は立派だなと、大人に見えた。私が出発する時も、わざわざ駅まで見送りに来てくれ、涙がでたのを覚えている。


大学に慣れてきた頃、K美から旅行で近くまで行くのでアパートに泊めてほしいと連絡がきた。

「狭い学生アパートだけど、それでよければどうぞ」と歓迎の返事をした。
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銀行で高給取りになり、ブランドの服や好きな物を買える立場のK美と、貧乏学生の私だったが、一緒に色々お喋りして楽しい夜を過ごせるだろうとワクワクした。
部屋が狭かろうが、それも楽しくていい思い出になるのではと。

K美がやってきた。

うちに泊まるのはK美だけだと聞いていたが、もう一人知らない人も一緒だった。

私が「2人分の布団とかスペースは無いけどいいの?」と聞くと「いいの、いいの、彼女はホテルがいいって言うけど、私が無理に連れてきたの」という。

その人の知らない話ばかりもできず、予想と違ってぎくしゃくした雰囲気になった。

私はK美と徹夜で色んなお喋りをして過ごす事になると思っていたのだが、予定が狂った。


お金はあるはずだし、ホテルに泊まりたいのに、知らない人の狭いアパートに無理やり連れてこられたその人は、無口で不機嫌だった。そりゃそうだろう。

私は何回も「うちよりホテルがいいんじゃない?」と言ったのだが、K美は「いいの、いいの。気を使わなくていいから」と言うだけで、強引だった。

夜になり、私が布団を敷いていると手伝う事なくそれを見ているだけのK美は、勝手に冷蔵庫を開けて「何か食べる物はないの?私たちの為に買い物してないの?」と言いだした。

「ろくな物はないわね」と言うので、「少ない仕送りではそんなものよ」と言い返しながら布団を敷く私。

夕食は外で私がご馳走した後で、深夜にそんな事を言いだしたのだ。

いくら友人でも、勝手に冷蔵庫を開け、何もないと文句をいうのは失礼だろうと思った。

しかも泊めてもらう相手だぞ。

2人共、何か持参するとかもいっさい無かったし。
いくら貧乏学生の私でも、そこまでケチらないぞ。礼儀はあったぞ。と後から思い出して気が付く。


K美は、私に会いたくて、一緒に過ごしたくて来たのではなかった。ホテル代を浮かしたかっただけ。ただ私を利用しただけだ。

寝床作りに困って、私は布団は使わず、二人に使ってもらう事にした。

そこへK美が、連れて来た友人に言っているのが聞こえた。

「ごめんね、〇〇さん。こんな狭くて汚い所に連れてきてしまって。我慢してくれる?」

                               続く