自分がまだ子どもだった時も、子の虐待事件はあった。

当時は、”躾けを厳しくしすぎて誤って怪我をさせてしまった”とか”育児ノイローゼが原因で心中しようとした”とか、親が深く後悔して泣き叫ぶほどの悲しい事件が多かった気がする。(あくまでも表面にでたものだけで、それが真実かはわからないが。)

そんな時、伯母が遊びに来ていて、こんな事を呟いていたのを覚えている。

「どんな母親だって、育児に悩んでるしカッとなるわよ。つい手が出てしまって、あ、しまったと思う事があってもおかしくない。憎くて怒鳴ったり、たたいたりするんじゃないのよ。

私だって、一歩間違えれば子どもが大怪我していたかもしれないと思う事あった。子育てって、大変よ。全て母親に押し付けられて、子どもが反抗して泣きわめけば、カッとなってしまう。

そしてそんな自分が嫌になる。泣きたくなるけど、母親なのに、とか母親が悪いとか言われて辛い。」

母が「”3歳の頃は、我が子の影まで憎いもの”という言い伝えがある。その頃は、確かに手がかかるから昔からそう言われてきたのね。」と言う。

「これは、これから子どもを産む人や、育児中のお母さんに対して、慰める為の言葉よ。子育てが上手くいかなかったり、つい怒鳴ったりするのは、当然の事だと言う事。昔の人も、皆同じ思いをしながら子育てしてきたんだよ、と言う事よ。自分だけじゃないってこと。」

と、私に教えてくれた記憶がある。


実際、自分が母となり、悩む度にその話を思い出しては、自分に言い聞かせてきた。それでも、後悔する事ばかりで、ダメな母親だなと思う。


でも…良い母親なんているのかな。「素晴らしい子育てをした」って言われる人がいる。何が根拠か。東大に入ったとか、お金稼いだとか有名になったとか、成功したらそれは子育ての成功なのだろうか。

それは違うと思うがな。という私の自分勝手な考え。

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それより、夫の子育てに対する姿勢も大きな影響を与えると思う。子どもを産めば自動的に子育てができる親になれる訳じゃない。親の資格をとる試験は無いんだから。

出産した病院で、初めての赤ちゃんで不安なママさんに、ベテランの看護師や助産師が「ママでしょ!しっかりしなさいよ。」とはっぱをかけていた。泣きそうな顔で不安気なママさんをその言葉で追い詰める事も知らずに。


私も初めての出産の時、同じ事を言われ、育児ノイローゼはこういう人達が作るんじゃないかとも感じたほど。その時も、救いになったのは先輩ママのお婆ちゃん。

「そんな事言ってたら、私たちの世代は皆母親失格になってしまう。神経質にならなくていい。」と言ってもらった。

苦しみながら親になっていく。それを共有したり、助ける周囲の人がいるかどうかで、母親はかなり子育てが楽になると思う。

子の父親との関係が悪く、子を愛せないという人もいるかもしれない。その複雑な気持ちをとんでもないと第三者は批判するだろう。

だから自分を責めながら感情を押し殺し、良い母親になろうと頑張るのだ。誰かこんな母親を抱きしめてあげる事ができるなら、協力してあげたら、どんなに救われるだろう。



ママ友の中には、「子どもが2歳の時、あんまり泣いてまとわりつくから、ちょっと振り払ったら台から落ちて、大怪我させてしまった事があるの。血まみれになった子どもを抱きかかえて、何て事をしたんだろうとパニックになったわ。後悔ばかりしていた。」

その話を聞いていたママたちも、あるある、わかると頷いていた。

今なら、これがたった1回のアクシデントだとしても、母親は逮捕されたかもしれない?

絶対に子どもを乱暴に扱ったり、怪我させたり、暴力はいけないのだ。

でも、気持ちはわかってほしい。子どもを育てながら、孤独で追い詰められる親の気持ちを。


こういう悩みながらの躾けと本物の虐待親の言う躾けとは種類が違うと思う。