昨日久し振りに思い出した人の話。
主人公は、友人、亜紀のお兄さん=ケイさんの遠い過去のお話。

当時、亜紀からケイさんの話題は聞いていたが、人さまのお宅の事情に興味の無かった私は、ただ聞き流していた。亜紀も、そのせいか、全ては話さず、断片的に口にしていた。

かなり年月が経ってから、別の人からケイさんの結婚の詳しい真実を聞き、ショックを受けた。当時、無関心で亜紀の気持ちに寄り添っていなかった事を反省した。


☆では、ケイさんの結婚について話そう。~~~~~~~

ケイさんは、地方から東京の大学に入り、卒業後そのまま東京で就職した。

学生時代にアルバイト先でお客として出入りしていた女子大学生のミキさんと恋愛をした。

ケイさんは、地方の公務員の息子。ミキさんは、有名企業の経営者のお嬢様だった。

ミキさんも一人暮らし。ミキさんの方が熱心にアタックし、ケイさんのアパートに入り込み、同棲をする形になった。

お嬢様なので、お金の使い方も生活ぶりも違っており、ミキさんは世話をやくタイプというよりも、してもらう方、なのでお金以外はケイさんに甘え、頼りきっていた。
ケイさんも、仕送りの多いミキさんに頼る事もあり、お互いに依存しあっていった。

ミキさんは、父親を極端に嫌っていた。交際がばれて、もし反対をしてきたら「親と縁を切る」と言っていた。

大学を卒業後ケイさんが就職すると、ミキさんから結婚を迫られた。彼女は就職せず専業主婦になろうとしていた。

お互いに親族への挨拶を交わしたのだが、両家が反対した。

ミキさんの家では、相手がまだちゃんと稼いでないという事、親が選んだ似たような家柄の人と結婚させたい。娘は所得の少ない生活に耐えられるはずがない。苦労させたくないと。

ケイさんの親は、ミキさんは、経済的な価値観が違うし、働く意志もなく、息子が養えるだろうか、まだ若すぎるのではないかという心配をしていた。

ケイさんは冷静で、一旦延期しようかと考えたが、ミキさんがヒステリックになり、今結婚をしてくれないと何をするかわからないぞ、親子の縁も切ると言いだした。

ミキさんは、ケイさんの親が反対した事を恨み、ケイさんの親族に会っても睨みつけ、誰とも口を利かなかったという。

両家共、激しい反発をするミキさんの態度に負け、結局結婚を許可した。

やはり、式場や引き出物など、女性側の希望のレベルが高く、亜紀の両親は大変だったらしい。

「昨日、母と私とミキさんとミキさんのお母さんとランチに行ったの。ご馳走しますからぜひと誘われて。」

「そしたら、高給レストランで豪勢なフランス料理で緊張したわよ。これがランチ?と思ったわ。母なんか、おどおどしてるから恥ずかしくて怒ってやったわ。ああいう時は、堂々としないとみっともないわよね。」

「こっちは慣れてないから、味も良くわからないけど、向こうはいつもの事みたいで慣れているんだよね。お兄ちゃんは大変な家の人と結婚したんだなあ。と感じたわ。」

と心配そうに話していた。それだけではない。

「新居に行ったらね、家具が凄いの。お兄ちゃんが学生時代に使っていた物は全部人にあげたり捨ててあって、家具は全部高級家具になっていたの。お兄ちゃんの服もよ。
今まで近所のスーパーやお店で買っていたけど、捨てられて、ワイシャツにしても、デパートでブランドの高い物に全部変えてあった。

ミキさんが安物は駄目だと言って。お兄ちゃんは、安月給だからそんなの買えないし、これからどうするんだろう。ミキさんの親に甘えていくなんてそんなの嫌なはず。」

「自分もミキさんの義妹としてうまくやっていけるのか心配」と、亜紀は不安気だった。

最初は「お兄ちゃんがお金持ちの令嬢と結婚した」と、自慢しているのかと思って聞いていた。

会うたび、心配そうに愚痴る事が増えていた。

相手の親の企業が、大物政治家もだしている超有名企業だったので、そこのご令嬢だというだけで、何だか怖いなと私は思っていた。