それからしばらくは、私は泣いてばかりいた。

朝通勤する途中、買い物に行く途中、運転する車の中でふと思い出しては涙がこぼれてきて、止まらなかった。

子どもを3人抱えて大変だろうなと思いながら、そんな時にお邪魔したら迷惑をかけると感じ、しばらくは手紙などをやり取りしていた。

ご主人からの手紙の内容は…

残された者の自責の念と優しさ故の後悔とで混乱されている様だった。

「僕は妻の事をわかっているつもりになっていて、実は何も知らなかった事を思い知らされました。」

「妻との別れがまさかあんな形になるなんて思ってもいなかった。」

「ある日突然妻が妻でなくなったんです。まともな会話もできない、別人になってしまい、それから2か月後に別れがきてしまった。」

「最後に妻と色々話したかった。これからと思っていたのに」

「僕は何をしていたんだろう。もっと沢山話をして妻の事を知っておけばよかった。後悔ばかりしています。」

ご主人が、自分を責める必要はないしT美も不満なんて無かっただろうし、感謝していると思う。

愛する人との別れ、それも納得のいかない予想もしなかった別れ方をすれば、誰でも後悔をし、自分を責める気持ちになるのは仕方がないのかもしれない。

それは自然な事だと思う。周りがいくら慰めたって、否定したって、無理な話だ。


落ち込むご主人に、”T美が乳癌で入院している間、送ってくれた数通の手紙がある”話をした。

「T美さんは、ご主人と結婚して良かったといつも手紙に書いていました。ご主人の協力があったから安心して治療に専念できたと感謝していました。今のご主人を彼女が見たら、そんな事ないよ!自分を責めないでって言ってると思います。」と伝えた。


すると「僕は妻が当時何を考えて居たかなんて全くわかっていませんでした。妻があの頃、何を思っていたかを知りたいです。もしよければ、手紙を見せて頂けないでしょうか」

とお願いされ、T美が見せてもいいよと言ってくれそうな手紙を選んでご主人に送った。

それが少しでもご主人の救いになるならと思った。

T美に頼まれてやった気がした。
T美の書いた手紙だけがご主人を救えそうな気がした。